夫の教えるA~Z
瞬間___

ピキッ。

空間が凍り付いた。

「あ、あり?」

彼の表情にはなんの感慨も見られず、瞬きも忘れてじっとこちらを凝視しているだけ。

「ど、どうです?トーコの…」

晴れ姿。

目の前で手を振ると、ハッと我に返ったように、2、3回瞬きをした。

「あ、ああ」

彼はフルフルと首を振った後、おもむろに言い放った。

「他の…無いの?…何かフィットネスクラブで使うみたいなヤツ」

「え?」

自信満々だった私は、愕然として夫を見つめた。
震える声でやっと返す。

「ほ、他と言っても…高校時代のスクール水着くらいしか…」

「スク……イヤそれはダメだ。もっとダメだ」
妙に慌てて不思議な独り言を言っている。


「あの…似合わない…ですか?」
私は俯いた。

「え?…イヤイヤ、そんなことはないっ、断じてない。むしろ今スグ手籠…イヤ何でもない」
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