夫の教えるA~Z
「あの……」
瞳が彷徨(うろつ)いている。
曖昧な感想、困った表情。

可愛いなんて…言ってくれそうにもない。

やがて彼は、コホンと咳払いをし、席を立った。

「あ~、あれだ。
見られないように、じゃねえや。
夏の日差しはオハダの大敵。
しっかり!ガードして長袖、長ズボンを着込んでおきなさい。
いいな?
間違っても谷間を見られたり触られたり挟まれたり…イヤ、いい…フロ、入ってくるわ…」

「アキトさん、ゴハンがまだ残って…」

「あ~、明日、雨降んねぇかな…」

彼は、結婚してから初めてゴハンを残し、不穏な独り言を呟きながらフラフラと行ってしまった……
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