夫の教えるA~Z
…くっそぉ、私には見向きもしないで…何やってんの、アイツはぁ!

プルプルと怒りに肩を振るわせる私を、実果ちゃんが懸命に宥める。

「接待だから、ね?トーコ、大神サンも仕方なく……」

イヤそんな事はない。
あれは…あれは天性なんだ。

「いこっ!」  
「トーコ…」
バカバカッ、キライ!

『しまった』と言う顔をしている実果ちゃんを引っ張り、私は浮き輪を沖に向かって漕ぎ出した。

正にその時だった。

「あのお……」
「何!」

トントンと肩を叩いた誰かを、思わずキッと睨み付けた。

「あ、ご、ゴメンね。急に」
剣幕に驚き、その人は身を引いた。


だがそれこそが、私が待ち焦がれたシチュエーションだったのだ!

オオ‼

何と、イケメンくんの2人組じぁあないか!
 
一人は脇にボディボードを抱えた、金髪ピアスのチャラ男くん、もう一人は、黒髪の優等生風イケメンくんだ。

「僕ら近くの学生なんだけど、君達2人?僕らも2人なんだけど、良かったら…」

キタよ、キタ!

大神トーコ苦節25年、生まれて初めて男性から声をかけられました。

これぞ水着の双子コーデ効果…

よぉ~し。見てろぉ、大神秋人!
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