夫の教えるA~Z
話し込むうちに輪は狭まり、肩が触れあうくらいになっていった、そんな時だ。

トン、トン。

話し込む私の背中を、何かが軽く2回叩いた。何気なくペイッと肩を払う。

「でね…」

トン、トン、トン。

もう、ウルサイな…

「ハイ?どなた……いっ…」

振り向いた顔が、にわかに凍った。

「やあ、トーコじゃないか」
「ダダダ、ダンナ様!」
 
超爽やかなキラキラ笑顔で、アキトさんが私を見下ろしていた。

見ると、釣り人逹はいつの間にかレーンを引き払っている。

話に夢中で気がつかなかった!

私は思わず、ササッと彼等から距離をとった。

「知り合いかね?大神君」
「ええ、“妻”でして…」 

鈴木社長逹に、然り気無く“妻”を強調する。男の子達が気まずそうに、顔を見合わせた。

ひとしきりの会話の後、彼はあらためて私逹に向き直った。

ザワワッ……

全身にひどい悪寒が走った。


怖すぎる。ニッコリ微笑んでいる顔なのに、目が全く笑っていない。


「…お友達?」
サッと面子を見渡した。

金髪クンのところで、3秒ほど目を留める。眼力で射殺(いころ)されそうだ。彼はゴクリと固唾を飲んだ。

 
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