夫の教えるA~Z
「ああ、君は」
顔見知りの実果ちゃんに微笑みかける。
何かを察知した彼女は、目をそらしつつペコリと頭を下げた。


……あの目。昨夜と同じだ。

そうか、分かった。

私の中で、全ての線が繋がった。

彼にとっては、
『ちょっと妬けちゃうな』
なんてもんじゃなかったんだ。

『その水着で、テメエは俺以外の誰をユーワクしたいんだ。調子のんなコラ。
男なんか誘ってみろ、只じゃ置かねえからな』
くらいのイキオイだったんだ。

もう。アナタってば……
どんだけ私のコト好きなのよ~♥

などと喜んでいる場合ではない。

何故ならば、私はウッカリ彼のボーダーラインを越えてしまったのだから。

あの静かな笑いは……
絶対に何か企んでいる時の笑いだ。

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