夫の教えるA~Z
彼がピクリと右手を動かす。
 
自然私は、その右手に目を向ける。
何やらオレンジ色の、ニュルニュルしたものが入った袋を持っている。

そ、それはもしや!

私の頭にキーンと警鐘が鳴り響いた。


5年ほど前、近くの海岸で初めて発見された猛毒危険生物 “ヒョウモンダコ”!!

驚愕した私から、彼がふいっと視線を逸らした。

「ああ、そうだ。妻が世話になったお礼に。これ、珍しかったんで…良かったら……」

彼は戸惑う金髪クンに、にこやかにその袋を差し出そうとした。
(さあ…どうする?)

「‼」

私は恐怖にオノノいた。


…あ、アナタまさか
いくらトーコが大好きだからって、

彼等に

そいつをけしかける気ですか‼

いくら何でもそれは、それはあんまりです!


私は目を閉じ、スウッと息を吸う。

……アキトさん、
例えどんなに理不尽でも、只一人アナタがトーコを選んでくれた時から、私はアナタの虜です。

大切なアナタを私は……

殺人者にしたくはありません‼

< 47 / 337 >

この作品をシェア

pagetop