夫の教えるA~Z
ちょうどその折、

「いやあ、まいったなあ、ちょっと道聞かれちゃって…」
白木くんが、右頬にショッキングピンクの口紅をつけたまま、ニコニコと登場。

その情景に、あっと驚きの声を上げた。

「あ、あれ?皆…あ、お、大神さん?
…エエエエエッ‼
何やってんの、トーコちゃん‼‼」

ハッと我に返る。

慌てて腫れた唇を離し、恐る恐る目を開けると……

お、おや?

「ト、トーコ……一体、どうしたんだ」

意表をつかれた様子のアキトさんと、固まっているその他の面々がうっすら見えた。

「こ、コラ、社長や皆さんの前で…失礼じゃないか。ダメだゾ?…いやあ、全く困った奴でして…」

私の額をピンっと弾く。

“コイツどんだけオレの事好きなんだよ~”
といった表情だ。

それを見た学生さん逹2人は、
“こいつら、頭オカシイ‼”
とばかりに、そそくさと逃げるように去っていった。
 
実果ちゃんと白木くんは、半ば放心状態だ。なのに実果ちゃんは、ぬかりなく彼の腕をギュウッとつねっていた。

いたたまれない。
 
でも最後に。

「ホッホッホ、いいねえ、若い者は。羨ましいよ。ね、マキタくん?(秘書)」

人格者の鈴木社長が、フォローで場を締めてくれたのが、せめてもの救いだった。


秘書の女の子が
“やだ、フケツ”
プイッと横を向いた……
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