夫の教えるA~Z
が、次の瞬間。

私の耳に口を寄せ、低い声で囁いた。
「何か悪いことでも…したの?」

ハッと見上げた私に、彼は冷笑を浮かべた。
ブルブルと大きく首を振ると、彼は満足げに私を見下ろし、それからそっと手を握った。

……やっぱりこの人、確信犯だ。

 
夕陽に染まる2対のカップルの砂浜に映る長い影が、距離を縮めて寄り添った。

誰もが羨むであろう幸せな4人。

だがその中で1人、胸の内に複雑な思いを抱く私がいた。

私への“アイ”ゆえに。

今回、彼が妬いてくれいのだということは、何となく分かった気がする。
 
嬉しいような、怖いような……

とにかく今後、

彼を試すようなマネは2度とすまい。


(F:おわり G③[全3話]につづく)
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