夫の教えるA~Z
「へぇぇ…あいつがねえ…」

「そうですよお、社内じゃ大変なプレイボーイで……噂では一晩で4人とデートしたとかしないとか……」

厳しい指導の後は、休憩と称してロビーで女子トーク。

「なんか、ピンとこないわね~」

長いストレートヘアを耳にかけながら、彼女は私のスケジュール表の上で、ペンを動かしている。

一方の私は水分補給、マイ水筒の特製ドリンクをがぶ飲みしている。

「アイツ、東京に進学してからは殆んどこっちに帰ってこなくなったからね~。
少なくとも高校の頃は、部活から帰ってひたすらプロテインを摂取する、ただの筋肉バカだったわよ?」

「下駄箱からラブレターがザラッとか…」
「ないない、ひとっつもない」

「体育館のウラに呼び出されたりとか、卒業式で、カッターシャツまでボタン奪われたりとか…」

「ないわ~~、ゼロ、女っ気ゼロ!
まあ…研究には余念がなかったみたいだけどね。さ、出来たよ」

ピラッと彼女は、私にプリント用紙を渡した。

「あ、どうも」

そうか。
大学デビューだったんだ。

だから今だに、中学生並みのエロ意欲を保持し続けているのだろう…

ここに来るのは、私はこっそりダンナサマの情報を収集することも兼ねている。

まさに一石二鳥だ。
< 59 / 337 >

この作品をシェア

pagetop