夫の教えるA~Z
そんなある日。

「はーい、トーコちゃん。こっち向いてぇ」

昼から夕方までビッシリの予定の最後、汐田コーチの“プール教室”を終えた私に、ナツコさんがスマホを向けた。

濡れた髪をフキフキしていた私は、咄嗟にカメラに向かってウィンクを決める。

「はい、オッケー。“送信”っと」

「え?何、もしかして、広告に出したりとか?」

私が可愛いからって、モデルに使ってくれるのかしらん?
キラキラした目で尋ねる。

「ううん違うよ~、トーコちゃんこの後予定ないよね?」

「?ええ、まあ。ゴハン作るくらいかな」

「合コンの人数、2人足りないって言われてさ。員数合わせ、お願いね」

「はい?……ご、合コン?」

「宜しく~~」
 
それだけ告げて、サッサと事務室に戻ろうとするナツコさんを、私は慌てて追い縋った。


冗談じゃない、コロされる!

「ち、ちょっと待って下さいよ」

ん?と彼女は振り返った。
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