夫の教えるA~Z
「だからイイんだよ。
 第一、結婚なんかで落ち着くオマエじゃないだろう?
…あ、新しい女の子の写真来たぞ。
…いいねえ…
見るか?オマエが好きそうなナチュラルピュア……」
「見ないよ」

「まあ、そう言わずに…」
言ったのにヤツは、無理矢理スマホ画面を寄せてきた。

「…………」

「な?オマエ好きだろ…ムネの辺りがヤワラかそうで……って、どうした?顔色悪いぞ」

「やっぱ行くわ、俺」

「よぉし、サスガは大神!」

“融資の件は任せとけ‼”

ドンと胸を叩いたヤツは、店名と時間を書いたメモを置いて、意気揚々と帰って行った。

俺はヤツを見送った後、静かに樫の執務机に腰掛けた。

両肘を突き、組んだ両手に額を乗せて押し黙る。

嫌な汗がジットリと額から腕に流れた。


……トーコちゃん。
君、俺がアクセクお仕事してる間に、一体何してくれてんの。
 

どこまで俺様を舐めてやがる。


やがて、腹の底から笑いが込み上げてきた。

クックック……


まあいいさ、死ぬほど後悔させてやろう。

裏切りには

制裁を。

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