夫の教えるA~Z
で、今に至る。


「…………」
「…………」


(ち、ちちちょっと、ナツコさん。これってどういうコトですか)

(し、知らないわよ。あんた達こそどうなってんの)

生き地獄だ。

アキトさん、私、お姉さんの三竦み状態。8人中3人身内、しかも夫婦でご対面とか……
 
緊張感、パねえっ‼

特に慌てる風もなく、妙に初対面を装おっているアキトさん。
他2人の女の子にしっかりロックオン、両脇を固められている。

そして後ろめたいのか、あからさまに横を向くナツコさん。

私といえば、すっかり血の気が引いている。

何故ならば、
来てすぐ迎えに出てくれた幹事らしき銀行員サンに、恐ろしい事実を聞かされたからだ。

(彼ね、君の写メ見て飛び入り参加決めたんだぜ。本命だよ、君。良かったね)

良くはない。
むしろ最後通告だ……


あの様子じゃあナツコさん、絶対言ってくれてない、彼の言う通り詐欺師だ……

目の前にいる彼の
あの含みのある微笑み……

ヤツが何も言わないのは、何か企んでいる証。
マズイ。
絶対に誤解されている。 

嗚呼、一刻も早く弁解したい。
だがしかし。
すれば必ず痴話喧嘩、一体どうしたものなのか……

後から思えばそれも禍いしたんだが、見栄っ張りな私はその時、ノンキにも世間体と情の狭間で悩んでいた。
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