夫の教えるA~Z
問題は次だった。
タケル先輩が当たりやがった。
コイツは昔から、あからさまにエロいヤツをチョイスする。
  
「じゃあ…」
先輩は、一同を眺め回し、間をたっぷりとためた。

「3番は……」

私だ! 
顔に出たのかも知れない。
目が合って、ニヤッと笑った先輩は私に向かって指令した。

「王サマに……抱きつけ」  
 
うう……イヤだ。

だけど私、さっきのバカ旦那のせいで少しイラッとしていた。

チックショオオオオ‼‼
 
だから私は半ばヤケクソに、タックルを決める勢いで、先輩の胴にぶつかっていったのだ。

と、すかさずヤツはグイッと私を丸め込んだ。

(ん~~~~‼)

ギュムムと絞められて離れられない。
心なしか胸に顔まで埋められ、挙げ句の果てにほっぺにチューまでされてしまった。

周りの皆は引いてるし、肩越しに彼が顔色を変えて、ガタっと半立ちになったのが見えて……

ゼェゼェ息を切らしながら、とうとう涙まで出てきた。

何が悲しくて夫の前でこんな醜態を……

先輩のバカ~~~‼


「ハイ、そろそろ最後」
場が一気に盛り下がったのを契機に、幹事が言った。
ホッとした。
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