夫の教えるA~Z
が、ここで。最悪の事態が訪れた。

「あ…俺、王サマだ」
 
 アキトさん……とんでもない魔王サマが誕生した。
「ふーん、どうするかな」

 冷やかな目に気づかない、女子2人はキャーキャーと喜んでいる。

 彼は場を眺め、ユックリと告げた。

「5番は立ち上がって…」

 銀行員サン、立ち上がる。

「ネクタイを外して……」
「?」
 首を傾げて言う通りにする。

「そこの、赤野燈子サンの手首をシバる…」

 エ……

 名指しですか⁉
 まさか、こんな命令が実行されるわけはない。周囲も余興と笑っている。

 しかしヤツは、生まれながらのKINGだった。

 銀行員サンは、催眠術にでもかかったように、フラフラと私に近寄った。
「え、ちょっ……」

 冗談交じりに両隣が逃げないように私を捉えると、言われた通りに(何故か)慣れた手つきでギュウと結んだ。

エエッ‼

「王サマに献上する」

「はっ、直ちに。…君キテ」

 熱に浮かされたような目で銀行員は、私を彼の前に本当に連行した。

 本気かよと、固唾を飲んで見守るギャラリー。

「ドウゾ、王様」
「うん」
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