夫の教えるA~Z
時は朝方、出社時刻に遡る。

私達は、何と言っても新婚さんの蜜月期。

「行ってらっしゃ~い、アキトさん」
「ああ」
チュッ♥

などという、恥ずかしい事を未だにやっていた。

しかし今日。

いつも同じに出社の儀式を行っていたところ、彼がとんでもない事を言い出したのだ。

「……何か違うな…」
「ホ?」

「もう、ひと月以上も経つんだしな。
ソロソロ…」

ベタベタするのは止めよう、と言う事か。私は、寂しい気持ちいっぱいで彼を見上げた。

私達は電撃結婚夫婦、恋人期間ゼロからのスタートした二人。
 
私としては、久しぶりにカレが出来たような気分だったから、もう少しイチャついていたかったのだが…

ついついウルッとキてしまう。

そうだよね、何人ものお嬢さんとお付き合してきた彼だ。

あんまりベタベタされるのは、もうイヤなのかもしれない。

泣きそうになるのを、何とか上向いて涙を留めた私。


だが、次の瞬間___



「マウス・トゥ・マウスだろ」



ドン引きした。
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