夫の教えるA~Z
 苦しげに悶えるサマでさえ、今は媚びた誘いに見える。
「んん…やぁ……」

 なげやりに、己の快楽だけを追求して動く。深く浅く、緩急をつけて……
 
 なあ、トーコ。
 オマエはその場さえ収まれば、何されたって平気なのか?

 頼むから、
嫌なことは嫌って言えよ。
俺だけが悔しがってんのか。

今だって『嫌だ』て言えばやめてやるのに……


 ポリシーとして。
 女はみんな可愛くて柔らかい、愛してやるべき存在だ。

 乱暴になんてしたことない。

 機嫌を取って、宥めてすかして持ち上げて、その気になったら冷たくして。
 最後には足を開かせる、そういうゲームが楽しかった。
 難関の、プライドの高い美人ほどその達成感は大きい。

 なのにコイツは規格外。
 単純バカで惚れっぽい、ゲームならきっとチョロイ女が、どうして俺をこんなに狂わす。

 壁の薄いチープな部屋に響くのは、荒々しい息遣い、悲鳴に似た喘ぎ声、そして虚しい摩擦音。
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