夫の教えるA~Z
プスッ。

「ああっ!」

 薄皮が破れて、中から白い液体がトロリと溢れ出る。




……タコヤキです。

 関西から赴任して来た隣室のオバチャンと仲良くなって、タコヤキ専用機を貸してもらったのだ。



「あ~~あ…」

 彼、アキトさんが落胆の声を漏らした。

「ホラね?だから言ったんですヨ、もっと奥まで大胆に突いていかないと……」

「だって、ハジめての事だから…上手いなお前…」

「こう見えて私、高校の文化祭には『メイド・タコヤキ喫茶』の焼き手として……」

「そら」
 彼は、壊れたそれを素早く私の口に放り込んだ。

「あふっ……」

 マフマフと口の中で転がしながら、ジロリと彼を睨み付けた。

「も~~、ヤケドしちゃうじゃないですか!」

「ハッハッハ…怒った顔もカワイイな……あふっ…」
 
 お返しに、彼のお口に焼けたばかりを放り入れる。

「こいつメ♥」

 モフモフしながら、彼は私の額を小突いた。

……ラブラブだ。

 もしこれが自分達でなかったら、間違いなく“シネ‼”とハリセンで後頭をハタくだろう。


 
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