夫の教えるA~Z
すっかり夕暮れ色に染まったカーテンを締めながら、私はつい溜め息を吐いた。

どうやら彼は、会社で重役さん達と対立してしまっているらしい。

あんなに毎日、疲れて帰ってくるのはそのせいだったのか。

若いし、強引で威張りんぼだから反発だって大きいんだろう……
 
彼は、外でいっぱい闘ってるんだなあ…
 

しんどくてイラついてる時に、私はずっと浮かれてて……妬かせたいだとかモテルとこ見せたいとか…
年下だからって甘えてて、何にも気づいてあげられなかった。

今回だって……彼が珍しく反省してるもんだからって、ついついイイ気になっちゃって。


と、さっきまでソファで腕を組んでいた彼が、気がつけば後ろに立っている。

「……ごめんな、トーコ」
「ううん、アキトさん」

彼は後ろからそっと肩に手を置いた。

「男のコにも、ちゃんと気遣ってあげるんですね……ほら、松田クンのコト」

「あ?ああ……まあ、そうだな」

因みに、
(単にアイツ、面倒くさそうだったからなんだが…)
などと彼が考えてることを、私は知らない。
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