青春グラフィティー*先生と生徒の関係。
本当のところは?
ボスンっと落とされたのはベッドの上。
先生はあたしの首元を見て、眉を顰めると巻いてあった包帯を取りだした。
「…せんせー、何してるんですかー?」
「包帯を取っているんです」
「いや、それは見たらわかるんですけど、なんで取ってるんですか…?」
「……っそんなの、
あなたが心配だからに決まってるじゃないですかっ!」
そうかそうか。
先生はあたしが心配で…って、うん?
「あのー、せんせーにはあたしより心配しなきゃいけない存在がありますよね…?」
「…例えば」
「例えばですか?
ほら、先生の彼女さんですよ」
あたしがそう言うと、先生の包帯を取っていた手がぴたりと止まった。
「……俺に彼女なんていません」
「え、だって前に話した時誤魔化してたし、噂で…」
「…はぁ。あの時は面倒くさくて適当に返事をしていただけですし、噂の女性は俺の姉です」
今度はあたしが驚く番だった。
めちゃくちゃ美人でスタイルの良い女の人は、先生のお姉さん。
「…な、んだ……別に、諦めなくても…よかったんだぁ…」
そう理解した途端、ボロボロ溢れ落ちる無数の雫。
「何を諦めるんですか」
「……せんせーを好きなこと」
えぐえぐと泣き出したあたしの涙で濡れた頬を、先生は溜め息を吐きながら拭う。
「全く誰が言い出したかわからないですが、勝手に噂を流されると困りますね」
包帯を取り終えた先生はあたしの首元を見て、眉間に皺を寄せる。
「……なんですかこの噛み跡は」
「…家で飼ってる猫に噛まれて、恭ちゃんが包帯巻いとけって、勝手に巻いたんです…」
あたしの首元にはくっきりと二つの跡が残っていた。
昨日、大好きなティナ(飼っている猫)と遊んでいた時、急に首元を噛まれた。
手加減なしに。
そのせいであたしはギャン泣きして、ティナの歯が深く刺さったせいか血が出てきて、恭ちゃんはティナを怒鳴りつけて噛み跡を消毒して包帯を巻いたのだ。
包帯なんて首に巻いてるのを学校で見られたら、騒がれるから嫌だと言っても頑固な恭ちゃんは聞いてくれなくて、 菌が入らないとその一点張りで包帯を巻いた。
「だから本当に大したことじゃないんですよ」
先生の視線から逃れたくて、ベッドから降りようとすれば、
「…俺にとっては大したことです」
先生の腕に抱きしめられていた。