青春グラフィティー*先生と生徒の関係。
「せんせー!さっきぶりー!!」
「全くあなたって人は」
「ふぎゃ!?」
保健室のドアを勢いよく開けたあたしの頭に、ずしりと重い何かが直撃した。
足元に落ちたものを見れば、『これであなたも丸わかり!〜身体の仕組みを隅々解説完全版〜』と言う人体模型が表紙を飾る図鑑みたいな分厚い本があった。
「……せんせー」
「なんですか」
「さすがに、これ投げるのは酷くないですか…?」
「あなたが仕事の邪魔を毎朝してくるのが悪いんですよ」
「…でも、」
「投げられたくないなら、保健室に毎朝来るのをやめてください」
「ぶー!せんせーのドケチ!そんなんだから彼女がいないんだよーっだ!」
あっかんべー!。と、舌を出しているあたしを先生は目を細めて睨みつけてくる。
「…俺がいつ彼女がいないって言いました?」
「えっ!?逆に、せんせーに彼女がいたの?」
あたしの言葉に溜め息を吐いた先生は、もう話したくないという様に、あたしに背を向けて書類整理を始めてしまった。
暇なあたしは保健室のベッドに寝っ転がる。
無理矢理起こされたあたしは、すぐにうとうとし始める。
寝ちゃいけないと思いつつ、下がってくる瞼に逆らえず眠りについた。
「…て、……さい」
「…んー」
「起きてください」
「むぅ、…あ、れ?せんせ…?」
「もう昼休みなんですが」
「ひ、る……っあー!!!!恭ちゃんに怒られる!!!」
がばりと起き上がったあたしに、先生は一瞬だけ目を見開くとすぐにいつものムスッとした表情に戻った。
「せんせーあたし戻んなくちゃ!」
「さっさと戻ってください。いつまでもベッドを占領されてたら堪りませんからね」
先生の言葉を背にあたしは急いで保健室を出て、教室へと向かう。
全力疾走で廊下を走っていたあたしだが、角を曲がろうとして、ちょうど角から伸びてきた手があたしの頭を掴む。
否、鷲掴みにされた。
あたしの頭を鷲掴みにしてきた人物に散々説教をされたのは言うまでもない。