青春グラフィティー*先生と生徒の関係。
「説明はここまでです。
中間テストの範囲でわからない場所があったら質問してください」
先生がそう言うと、待ってましたと言わんばかりにあの女子二人組のうちの片方が手を上げて、
「先生は彼女いるんですかー?
この前、繁華街で美人な人と腕組んで仲よさ気に歩いてたのを見てた人がいるんですよー!」
と、質問した。
それに対し先生は嫌そうに顔を歪める。
「…はぁ。それは保健体育の中間テストに関係する質問ですか?」
「違いますけど、気になって勉強に身が入らないんですよぉー」
嫌そうな先生に、この話は全て話してもらうと言わんばかりに食い付く女子。
「池田くん」
「…なに」
「ここの問題わかる?」
「ここか?」
「そうそう」
「ここはこの数式とこの公式を当てはめてやれば簡単だぞ」
「ほぉー。池田くんは数学得意なのか」
「いや、これくらいは誰だって解けるだろ」
「……ここに解けなかった人がいるんですが」
下から睨むようにして池田くんを見れば、可笑しそうに笑いながら頭を撫でてきた。
「……?」
「どうした」
「…いや、ただの気のせい?」
池田くんが頭を撫でた瞬間、誰かの刺さるような視線がしたような?しなかったような?
ほんの一瞬だったからよくわかんなかったけど。
…まぁ、気のせいだよね。
黙々と数学の問題集を解き始めたあたしは知らない。
眉間に皺を寄せてあたしを見ている人がいたことに。