青春グラフィティー*先生と生徒の関係。
「なんだなんだお前がこんなに荒れてるなんて珍しいな」
「煩いです。黙っててください」
「どうした?噂の彼女と喧嘩でもしたのか?」
どうなんだ。と、ニヤニヤ見てくる同僚の顔を無性に殴りたくなるのはどうしてだろうか。
久しぶりに職員室のデスクで書類整理と提出関係のものをまとめていたら、同僚の畑山恭介が絡んできた。
それより、
「…噂の彼女ってなんですか」
「あれ?お前知らないのか?
十河先生がめちゃくちゃ美人なスタイル良い女と仲良く腕組んで繁華街を歩いてたってヤツ」
美人でスタイルが良い女と腕組んで繁華街を歩いてた…?
いつだったかどこのクラスでか聞かれた気がしたが、
「…身に覚えがないんですが」
「はぁ?だって、サッカー部の佐藤って奴が見たらしいぞ」
「もしかして、それは、」
それは自分の姉のことなんじゃ。と、言おうとして、その声は、
「せんせーいますかー?」
最近聞きなれなくなった声に遮られた。
声のする方を見れば、職員室の中をキョロキョロと見回してる眠り姫。
眠り姫の呼んでいる先生とは誰だろうか?
だが、あの女子生徒が仲良くしてる先生なんて俺以外に見たことがない。
だから、ここは消去法でいくと俺なんじゃと思い、座っていた椅子から腰を上げようとして、
「…あいつやっと来たか」
隣にいた畑山の声に、腰を上げようとしている姿勢のまま固まる。
眠り姫に近寄っていく畑山を見て、胸の内が黒い靄で犯されるような感覚を覚える。
「恭ちゃん!」
「おい!バカやめろ!学校で名前で呼ぶなって言ってんだろ!」
「だって中々電話に出てくれなかったじゃん!」
「だからってな…はぁ…」
「今日は絶対家に行くからね」
「わかったわかった。だからそんな大きな声で喋るな。誰かが聞いてたら…」
畑山はそう言って職員室の中を見回して、俺と目が合った。
目が合って固まった畑山の陰から、ひょこりと顔を覗かせた眠り姫と思いっきり視線が混ざり合った。