屋上カメラマン
「そう、あなたは悪い人間のはずなの。なのにすぐ携帯を返したり、ひどい事した後で素直に謝ったり。どういうこと?」

 どういうこと、と訊かれても困る。普段は悪い人間ではないが、今回はたまたま悪いことをしてしまったので、素直に謝っただけだ。

「どうしても見ておきたかったんだ。写真を撮る自分の姿を」

「……わけわかんない」

「この気持ち、まだ君には分からないだろうな。でも、すぐに分かるようになる」

「どういうこと?」

 彼女がイライラとした口調でそう訊いてきた。

 思わず笑ってしまう。それは、彼女と二年前の俺が重なって思えたからだ。俺はこの屋上を初めて訪れた日に、彼女と同じように誤解をして、同じように困惑していた。

 その日のことを思い出しながら、さらに彼女を困惑させてしまうであろう頼みを口にする。

「君にどうしても頼みたいことがあるんだ──」






 二年前の良く晴れた日。

 いつものように中庭でバレーを楽しんでいた時に、何者かが屋上から盗撮をしているのに気付いた。少し迷った末に、用があるからと言ってバレーから抜け出し、屋上に向かった。
< 4 / 10 >

この作品をシェア

pagetop