屋上カメラマン
 階段を最上階まで駆け上がり、白いペンキが剥がれ落ちて、所々錆びついてしまっている鉄の扉を開いた。

 日の光の眩しさに目を細めながら辺りを見渡して、屋上の隅にこっちに背を向けて座り込んでいる男を見つけた。

 この男には見覚えがある。廊下で何度かすれ違っただけだが、この見事な肥満体は強く印象に残っていた。卒業を間近に控えている三年生の先輩だ。この男が他の先輩から「ドン」と呼ばれているのを聞いたことがある。

 すぐ真後ろまで近づいて行っても、ドンは全くこちらに気付かない。写真を撮るのにで夢中で、熱心にカメラのレンズを覗き込んでいる。

 衿をつまんで軽く引っ張ると、ドンはポテンと尻餅をついた。心底驚いた表情をして、俺の顔を仰ぎ見てくる。

「盗撮なんかしてんじゃねぇ」

 威嚇するように鋭い目付きをして睨む。ドンは見るからに気弱そうで、ビビってすぐに謝ってくるだろうと思っていたが、ドンの返答は予想と大きく異なっていた。

「写真を撮って何が悪い!!」

 予想外の大声と迫力に、逆に少し気圧されてしまった。
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