ツインクロス
最近クラス内では、専ら雅耶の彼女の話題で持ちきりだった。
昼休みになり、いつも通り仲間達と集団で食堂へと向かうその時でさえも、皆話題は同じようなことばかりだった。
(流石に私立の女子高ともなると、男達の憧れ…とかなんだろうけど…。でも、ここまで皆目の色変えちゃうもんなんだな。…確かに制服可愛かったけど…)
冬樹は冷静にクラスメイト達を傍観していた。
「ねぇ、合コンやるとしたら冬樹チャンも勿論行くっしょ?」
嬉々として話してくる長瀬に、冬樹はオムライスをつつきながら首を振った。
「いや、オレはそういうのはいいよ」
「へっ?何でっ?」
同じテーブルに座っていた仲間達も不思議そうに、そんな冬樹に注目する。
斜め前の席に座っていた雅耶も、冬樹に視線を移した。
「オレ、基本的に殆どバイト入ってるし。だから時間的に難しいっていうのもあるけど…。もともとそーいうの苦手なんだ」
(何しろオレ自身女だし…。興味も何もないってーの)
これは言えないけれど。
それに…冬樹が何故、敢えて危険度が増す男子校を選んだのかというと、その理由が『女子がいないから』…だった。
同年代の女子を見ているのが辛くて、逃げたのだ。
おしゃれや可愛いものの話。好きな男の子のことや美味しいスイーツの話。そんなことで盛り上がっている、ふわふわキラキラした同年代の女の子達を見ていられなかった。関わりたくなかったのだ。
『もしも、ふゆちゃんがいて。自分が夏樹のままだったなら…?』
そんなことを少しでも考えてしまう自分が許せなかった。
彼女達の中に『夏樹』の影がチラつくのが苦痛だった。
それに、自分が成り得ない可愛い女の子に、恥じらい、色目を使って告白なんかされた日には、たまったものではない。
そんな思いを中学時代に何度か経験した冬樹は、苦痛から逃げるように男子校を選んだ。
後ろめたさと、ほんの少しの憧れを断ち切るように…。
「ヒューヒュー♪冬樹チャン硬派ーっ!…ってか、バイトなんかしてんのっ?そんなに毎日っ?」
長瀬が意外とでも言うように、驚いている。
「ああ、ほぼ毎日かな…。だってオレ、苦学生だから」
冬樹はそう言って鮮やかに笑うと、話は終わったとでも言うように、スプーンにすくったオムライスへと意識を向けた。
((…えっ…?苦学生?))
思わぬ言葉を、あまりにサラッと、あまりに鮮やかに笑いながら冬樹が口にしたので、誰もが気になりながらもその話題に触れることが出来ず、そこはそのままスルーされたのだった。
昼休みになり、いつも通り仲間達と集団で食堂へと向かうその時でさえも、皆話題は同じようなことばかりだった。
(流石に私立の女子高ともなると、男達の憧れ…とかなんだろうけど…。でも、ここまで皆目の色変えちゃうもんなんだな。…確かに制服可愛かったけど…)
冬樹は冷静にクラスメイト達を傍観していた。
「ねぇ、合コンやるとしたら冬樹チャンも勿論行くっしょ?」
嬉々として話してくる長瀬に、冬樹はオムライスをつつきながら首を振った。
「いや、オレはそういうのはいいよ」
「へっ?何でっ?」
同じテーブルに座っていた仲間達も不思議そうに、そんな冬樹に注目する。
斜め前の席に座っていた雅耶も、冬樹に視線を移した。
「オレ、基本的に殆どバイト入ってるし。だから時間的に難しいっていうのもあるけど…。もともとそーいうの苦手なんだ」
(何しろオレ自身女だし…。興味も何もないってーの)
これは言えないけれど。
それに…冬樹が何故、敢えて危険度が増す男子校を選んだのかというと、その理由が『女子がいないから』…だった。
同年代の女子を見ているのが辛くて、逃げたのだ。
おしゃれや可愛いものの話。好きな男の子のことや美味しいスイーツの話。そんなことで盛り上がっている、ふわふわキラキラした同年代の女の子達を見ていられなかった。関わりたくなかったのだ。
『もしも、ふゆちゃんがいて。自分が夏樹のままだったなら…?』
そんなことを少しでも考えてしまう自分が許せなかった。
彼女達の中に『夏樹』の影がチラつくのが苦痛だった。
それに、自分が成り得ない可愛い女の子に、恥じらい、色目を使って告白なんかされた日には、たまったものではない。
そんな思いを中学時代に何度か経験した冬樹は、苦痛から逃げるように男子校を選んだ。
後ろめたさと、ほんの少しの憧れを断ち切るように…。
「ヒューヒュー♪冬樹チャン硬派ーっ!…ってか、バイトなんかしてんのっ?そんなに毎日っ?」
長瀬が意外とでも言うように、驚いている。
「ああ、ほぼ毎日かな…。だってオレ、苦学生だから」
冬樹はそう言って鮮やかに笑うと、話は終わったとでも言うように、スプーンにすくったオムライスへと意識を向けた。
((…えっ…?苦学生?))
思わぬ言葉を、あまりにサラッと、あまりに鮮やかに笑いながら冬樹が口にしたので、誰もが気になりながらもその話題に触れることが出来ず、そこはそのままスルーされたのだった。