ツインクロス
いい加減、この状況を打開したいと思っていた。
既に自分の中で、彼女への答えは出てしまっているから。
だが、皆が楽しみにしている合コンの、ある意味幹事役になってしまっている自分と彼女が、今ここで決裂すれば…当然合コンも流れてしまう可能性もある訳で…。
(皆に押されて渋々引き受けたとは言え、これで中止になんかなった日には、どんな恨みを買うか…分かったもんじゃないよな…)
考えただけで気が重い…。
それに、今となっては、まるで『それが生きがいだ』とでもいうように、その日が来るのを楽しみに待っている友人の姿を見ていれば、出来れば希望を叶えてあげたいとは思う。
だが…それだけの為に、いつまでもこの状態のままでいるというのも彼女には悪い気がして、雅耶は思い悩んでいた。
思わず考える方に集中していたのか…。
気が付けば冬樹の姿はもう、教室内にはなかった。
(仕方ない、帰るか…)
雅耶は席を立つと、そのままゆっくりと教室を後にした。
冬樹はひとり門へと続く並木道を歩いていた。
長瀬から用があるから今日は先に帰ると伝えられて、雅耶に声を掛けるかどうか考えて…止めた。
多分、彼女が今日も門の前で雅耶を待っているだろうから。
(流石に目の前でイチャイチャされるのは勘弁して欲しいし…)
雅耶は本意ではないと、散々訴えてはいたけれど。
きっと…あんな可愛い子に慕われたら、男なら誰だって悪い気はしないだろうと思う。
今まであまり意識したことはなかったけれど、以前、雅耶にぴったりと寄り添って並んで歩いている彼女を見て、『友人』と『彼女』との距離の違いを改めて見せつけられたような気がしていた。
男同士では、有り得ない距離感。
女の子というだけで、そのテリトリーに入り込める彼女が、少し羨ましく感じた。
だからと言って、自分が同じように雅耶にくっついて歩いているのを想像しても、やっぱり気持ち悪いだけなのだが…。
(あれ…?)
校門の傍まで来ると、何だかいつもと様子が違っていた。
彼女は、いつものその場所ではなく、学校に面している道沿いの向こう側で、数人の男達に囲まれていた。
見る限りでは、上級生達に言い寄られている感じだった。
クラスメイト達が数人、遠巻きにどうしたらいいか不安げに眺めていて、冬樹に気付くと声を掛けて来た。
「なぁ…あの子って、例の久賀の彼女だろっ?…なんかヤバイことになってねぇ?」
「何かさっきから絡まれてるみたいなんだ…」
皆、不安げにそう囁き合っているだけで、面と向かって助けに行く気はないらしい。
「………」
冬樹は無言でそちらの方へと足を向けた。
「おっ…おいっ野崎。戻ってこいっ」
「待てよっ…久賀を待った方が…」
後ろで自分を止める声が聞こえたが、冬樹は足を止めることなく近付いて行った。
既に自分の中で、彼女への答えは出てしまっているから。
だが、皆が楽しみにしている合コンの、ある意味幹事役になってしまっている自分と彼女が、今ここで決裂すれば…当然合コンも流れてしまう可能性もある訳で…。
(皆に押されて渋々引き受けたとは言え、これで中止になんかなった日には、どんな恨みを買うか…分かったもんじゃないよな…)
考えただけで気が重い…。
それに、今となっては、まるで『それが生きがいだ』とでもいうように、その日が来るのを楽しみに待っている友人の姿を見ていれば、出来れば希望を叶えてあげたいとは思う。
だが…それだけの為に、いつまでもこの状態のままでいるというのも彼女には悪い気がして、雅耶は思い悩んでいた。
思わず考える方に集中していたのか…。
気が付けば冬樹の姿はもう、教室内にはなかった。
(仕方ない、帰るか…)
雅耶は席を立つと、そのままゆっくりと教室を後にした。
冬樹はひとり門へと続く並木道を歩いていた。
長瀬から用があるから今日は先に帰ると伝えられて、雅耶に声を掛けるかどうか考えて…止めた。
多分、彼女が今日も門の前で雅耶を待っているだろうから。
(流石に目の前でイチャイチャされるのは勘弁して欲しいし…)
雅耶は本意ではないと、散々訴えてはいたけれど。
きっと…あんな可愛い子に慕われたら、男なら誰だって悪い気はしないだろうと思う。
今まであまり意識したことはなかったけれど、以前、雅耶にぴったりと寄り添って並んで歩いている彼女を見て、『友人』と『彼女』との距離の違いを改めて見せつけられたような気がしていた。
男同士では、有り得ない距離感。
女の子というだけで、そのテリトリーに入り込める彼女が、少し羨ましく感じた。
だからと言って、自分が同じように雅耶にくっついて歩いているのを想像しても、やっぱり気持ち悪いだけなのだが…。
(あれ…?)
校門の傍まで来ると、何だかいつもと様子が違っていた。
彼女は、いつものその場所ではなく、学校に面している道沿いの向こう側で、数人の男達に囲まれていた。
見る限りでは、上級生達に言い寄られている感じだった。
クラスメイト達が数人、遠巻きにどうしたらいいか不安げに眺めていて、冬樹に気付くと声を掛けて来た。
「なぁ…あの子って、例の久賀の彼女だろっ?…なんかヤバイことになってねぇ?」
「何かさっきから絡まれてるみたいなんだ…」
皆、不安げにそう囁き合っているだけで、面と向かって助けに行く気はないらしい。
「………」
冬樹は無言でそちらの方へと足を向けた。
「おっ…おいっ野崎。戻ってこいっ」
「待てよっ…久賀を待った方が…」
後ろで自分を止める声が聞こえたが、冬樹は足を止めることなく近付いて行った。