ツインクロス
冬樹は、必死に人通りのない住宅街を駆け抜けていた。…とはいえ、学校の鞄を抱え、尚且つ制服ということもあり大したスピードは出せず、履いている革靴がカツカツ…と高らかな音を立てた。
もう少しで自宅のアパート…という所まで来て、角を曲がろうとした、その時。
「あっ!!」
ヤバイ!…と、思った時には既に遅かった。
そこに佇む人影に咄嗟に減速するも間に合わず、
「――っ!!」
「うわっ!」
ドンッ…と、思いっきり出合い頭に衝突してしまった。
相手はよろめいただけだったが、冬樹は弾き飛ばされるように後方へと倒れ込む。
「あぶないっ!」
「……っ…」
瞬時に伸びて来た腕に手首を掴まれ、尻餅はついたものの勢い余って背や後頭部を打つことまでは免れた。
「すっ…すみませ…」
ハァハァ…と息を切らしながら、腕を掴まれたまま俯いて座り込んでいた冬樹は「大丈夫かっ?」…と、頭上から降って来た声に驚いて、まさかと顔を上げた。
「…まさ…や?」
そこには、心配げに自分を見下ろす雅耶がいた。
(何で…こんな所にっ?)
信じられないものを見るように固まっている冬樹の様子に、余計に心配になった雅耶が顔を覗き込んでくる。
「…冬樹?…大丈夫か?」
「あ…ああ…」
掴んだ腕を引っ張り上げて、立たせてくれる。
「…あ…りがと…」
未だに放心状態で大きな瞳を揺らしている冬樹に。
雅耶は落ちている鞄を拾うと、それを軽くはたいて渡した。
「あ…うん。…さんきゅ…」
未だに驚きを隠せないでいる冬樹。
街灯の明かりなのでハッキリとは分からないが、心なしか顔色が悪い。
雅耶は暫く心配げな顔で見詰めていたが、不意に表情を引き締めると口を開いた。
「こんな暗い道、急に飛び出してきて…。気を付けないと危ないだろっ?これが自転車相手とかだったら、大怪我してるとこだぞっ」
まるで子供みたいなことを言われてるな…と、思いながらも。
雅耶の言い分はもっともなので、素直に反省をする。
「ご…めん…」
冬樹は不意に先程の気配を思い出し、走って来た道の方へと視線を向けた。だが、その通りには人ひとり見当たらず、今はもう特に何の気配も感じなかった。
(気のせい…じゃないよな?…雅耶がいたから引いたのか…?)
冬樹は漸く緊張を解くと、小さく息を吐いた。
もう少しで自宅のアパート…という所まで来て、角を曲がろうとした、その時。
「あっ!!」
ヤバイ!…と、思った時には既に遅かった。
そこに佇む人影に咄嗟に減速するも間に合わず、
「――っ!!」
「うわっ!」
ドンッ…と、思いっきり出合い頭に衝突してしまった。
相手はよろめいただけだったが、冬樹は弾き飛ばされるように後方へと倒れ込む。
「あぶないっ!」
「……っ…」
瞬時に伸びて来た腕に手首を掴まれ、尻餅はついたものの勢い余って背や後頭部を打つことまでは免れた。
「すっ…すみませ…」
ハァハァ…と息を切らしながら、腕を掴まれたまま俯いて座り込んでいた冬樹は「大丈夫かっ?」…と、頭上から降って来た声に驚いて、まさかと顔を上げた。
「…まさ…や?」
そこには、心配げに自分を見下ろす雅耶がいた。
(何で…こんな所にっ?)
信じられないものを見るように固まっている冬樹の様子に、余計に心配になった雅耶が顔を覗き込んでくる。
「…冬樹?…大丈夫か?」
「あ…ああ…」
掴んだ腕を引っ張り上げて、立たせてくれる。
「…あ…りがと…」
未だに放心状態で大きな瞳を揺らしている冬樹に。
雅耶は落ちている鞄を拾うと、それを軽くはたいて渡した。
「あ…うん。…さんきゅ…」
未だに驚きを隠せないでいる冬樹。
街灯の明かりなのでハッキリとは分からないが、心なしか顔色が悪い。
雅耶は暫く心配げな顔で見詰めていたが、不意に表情を引き締めると口を開いた。
「こんな暗い道、急に飛び出してきて…。気を付けないと危ないだろっ?これが自転車相手とかだったら、大怪我してるとこだぞっ」
まるで子供みたいなことを言われてるな…と、思いながらも。
雅耶の言い分はもっともなので、素直に反省をする。
「ご…めん…」
冬樹は不意に先程の気配を思い出し、走って来た道の方へと視線を向けた。だが、その通りには人ひとり見当たらず、今はもう特に何の気配も感じなかった。
(気のせい…じゃないよな?…雅耶がいたから引いたのか…?)
冬樹は漸く緊張を解くと、小さく息を吐いた。