ツインクロス
二校の男女12名ずつが集まると、流石にかなりの大所帯となった。
レストランの個室を借り切って、雅耶と唯花以外のメンバーの席はくじ引きで決定し、男女が交互に並ぶようにセッティングをした。
幹事…という程ではないが、今回の合コンのきっかけとなった、雅耶と唯花が最初だけ取り仕切って、前に出てジュースで乾杯の挨拶をすることになった。
その際に、
「唯花の彼氏…超!カッコイイじゃん」
「背高いし、私、超理想なんだけどーっ」
そんな風に、こっそり声を掛けてくる友人達に。
「久賀くんはダメだからねっ。他の子にしてよねっ」
唯花は嬉しそうに笑うのだった。

昼食を兼ねての合コンは、かなりの盛り上がりを見せていた。
雅耶も仲間達と一緒に女の子を交えて会話に花を咲かせ、それなりに楽しい時間を過ごしていた。

そうして、一時間半程経過した頃。
雅耶の携帯に一本の電話が掛かって来た。
着信表示には『直純先生 携帯』と書かれている。
(こんな時間に先生からなんて、珍しいな…?)
そう思いながらも雅耶はその場から席を外すと、部屋を出て通路の片隅で通話ボタンを押した。

『雅耶?お疲れっ。…ごめんな、今平気か?』
珍しく、少し慌てた様子の直純の声。
「先生、お疲れ様ですっ。全然大丈夫ですけど…何かあったんですか?」
『んー…ああ。お前にちょっと聞きたいことがあってさ。冬樹のことなんだけど…』
「えっ…?」
冬樹と聞いて、雅耶は少し構えた。
『冬樹…、今日学校行ったか?』
「え?…はい、普通に登校してましたけど…」
どういう意図の質問なんだろう?
雅耶は、次の言葉を待った。
『そうか…。帰りは?何処かまで一緒だったりしたか?』
「え…?学校を出る辺りまでは一緒でしたが…。俺は用があってまだ学校の近くにいるんですけど、冬樹は先に帰った筈です」
そこまで言うと、直純は『そう、か…』と考え込むように声のトーンを下げた。

「先生…?」

訳が分からなくて、こちらから質問をしようと思った時、直純が再び聞いてきた。
『あいつ…何か言ってなかったか?調子悪そうだったりとかは…?』
「えっ?別に…特には…」
普通に元気そうに見えた。
笑顔で手を振って帰っていったのだから。
それを聞いた直純は、考え込むような、でも何処か余裕の無さが雰囲気から感じられた。
「先生…?いったい…どうしたんですか?」
雅耶は、妙な胸騒ぎを感じた。
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