ツインクロス
直純のその無言の間に耐えられなくて、雅耶は声を大きくして言った。
「先生っ?冬樹がどうしたってっ…」
『ごめん、雅耶。実は…冬樹と全然連絡が取れないんだ。バイトの時間になっても来なくて…。何の連絡も無しに遅れたり、休んだりする奴じゃないから少し心配になってな…。お前に聞けば何か分かるかなと思ったんだが…』
その後の言葉は、あまり頭に入って来なかった。
(冬樹に何かあったかも知れない…?)
その言葉だけが、ぐるぐると雅耶の頭の中を廻っていた。
直純との電話を切った後、すぐに冬樹の携帯に電話してみるが、やはり呼び出し音がずっと鳴り続けるだけだった。
雅耶が部屋に戻ると、唯花が待っていたように微笑みかけてくる。
「…久賀くん…?どうしたの?」
「ごめん、俺…ちょっと用が出来て…。先に失礼するよ」
雅耶は手短にそう言うと。
会話が弾んでいる長瀬の傍まで行くと、耳打ちしながら簡単に理由を説明して、その場の締め全般を任せることを伝える。
「OK!任せとけって♪」
長瀬の快諾に雅耶は片手を上げて「ヨロシクなっ」…と言うと、自分の荷物を素早く手にして立ち上がると。
全体に挨拶だけして、すぐさまその場を後にした。
「待って!久賀くんっ」
突然の雅耶の行動に、唯花は戸惑いながら廊下まで追い掛けて出て来た。
「突然どうしたのっ?急に帰っちゃうなんて…っ」
雅耶が足を止めて振り返ると、言外に「帰らないで」と目で訴えている唯花と目が合った。
「…ごめん…ちょっと急用が出来たんだ。後は長瀬に任せてあるから、時間になったら適当にお開きにして貰えるかな?」
それだけ言うと、再び足を前に向けようとする。
「久賀くん…」
唯花は直感で全てを理解した。
「…じゃあ…」
そう言って背を向ける雅耶に、唯花は俯くと小さく声を掛けた。
「どうせ…、野崎くんのこと…なんでしょう?」
「えっ…?」
雅耶は我が耳を疑った。
何故、彼女が冬樹のことを…今、この状況で口にするのだろう?
自分は電話の内容を誰にも言っていない。
長瀬にさえ『冬樹』の名を口にしてはいないのだから。
「どうして…唯花ちゃんが、冬樹のことを?」
驚いた様子で、唯花を振り返っている雅耶に。
(やっぱり野崎くんの話しになると、こっちを見てくれるんだね…)
唯花は、半分泣き笑いで言葉を口にした。
「私…見ちゃったの…。さっき、このお店に来る前に…野崎くんを見掛けたんだ…」
「え…っ?本当に…?いったい何処でっ?…実は、冬樹と連絡が取れなくて、知り合いが探しているんだっ」
興奮気味に詰め寄ってくる雅耶に、唯花は小さく笑った。
「何処に行ったかは知らない…。ただ、車に乗せられて…行っちゃったの…」
「先生っ?冬樹がどうしたってっ…」
『ごめん、雅耶。実は…冬樹と全然連絡が取れないんだ。バイトの時間になっても来なくて…。何の連絡も無しに遅れたり、休んだりする奴じゃないから少し心配になってな…。お前に聞けば何か分かるかなと思ったんだが…』
その後の言葉は、あまり頭に入って来なかった。
(冬樹に何かあったかも知れない…?)
その言葉だけが、ぐるぐると雅耶の頭の中を廻っていた。
直純との電話を切った後、すぐに冬樹の携帯に電話してみるが、やはり呼び出し音がずっと鳴り続けるだけだった。
雅耶が部屋に戻ると、唯花が待っていたように微笑みかけてくる。
「…久賀くん…?どうしたの?」
「ごめん、俺…ちょっと用が出来て…。先に失礼するよ」
雅耶は手短にそう言うと。
会話が弾んでいる長瀬の傍まで行くと、耳打ちしながら簡単に理由を説明して、その場の締め全般を任せることを伝える。
「OK!任せとけって♪」
長瀬の快諾に雅耶は片手を上げて「ヨロシクなっ」…と言うと、自分の荷物を素早く手にして立ち上がると。
全体に挨拶だけして、すぐさまその場を後にした。
「待って!久賀くんっ」
突然の雅耶の行動に、唯花は戸惑いながら廊下まで追い掛けて出て来た。
「突然どうしたのっ?急に帰っちゃうなんて…っ」
雅耶が足を止めて振り返ると、言外に「帰らないで」と目で訴えている唯花と目が合った。
「…ごめん…ちょっと急用が出来たんだ。後は長瀬に任せてあるから、時間になったら適当にお開きにして貰えるかな?」
それだけ言うと、再び足を前に向けようとする。
「久賀くん…」
唯花は直感で全てを理解した。
「…じゃあ…」
そう言って背を向ける雅耶に、唯花は俯くと小さく声を掛けた。
「どうせ…、野崎くんのこと…なんでしょう?」
「えっ…?」
雅耶は我が耳を疑った。
何故、彼女が冬樹のことを…今、この状況で口にするのだろう?
自分は電話の内容を誰にも言っていない。
長瀬にさえ『冬樹』の名を口にしてはいないのだから。
「どうして…唯花ちゃんが、冬樹のことを?」
驚いた様子で、唯花を振り返っている雅耶に。
(やっぱり野崎くんの話しになると、こっちを見てくれるんだね…)
唯花は、半分泣き笑いで言葉を口にした。
「私…見ちゃったの…。さっき、このお店に来る前に…野崎くんを見掛けたんだ…」
「え…っ?本当に…?いったい何処でっ?…実は、冬樹と連絡が取れなくて、知り合いが探しているんだっ」
興奮気味に詰め寄ってくる雅耶に、唯花は小さく笑った。
「何処に行ったかは知らない…。ただ、車に乗せられて…行っちゃったの…」