ツインクロス
何でもないことのように話す唯花に、雅耶は驚きを隠せなかった。
「それって…。どういう…こと…?車…?」
唯花の言っている意味が解らない。
「唯花ちゃんっ、お願いだっ。知ってる事を教えてくれっ」
真剣に話しの続きを促してくる雅耶に、唯花はぽつりぽつりと語りだした。
「私、野崎くんも今日参加するのかなって思ってたの。でも、野崎くん…一本先の道を入って行っちゃって…。だから『お店はこっちだよ』って教えてあげようと思って後を追い掛けたの…」
「…うん…」
「でも…。そしたら、私がその道に出た時には、野崎くんが…男の人に抱えられてて…。そのまま車に乗せられて、何処かへ連れて行かれちゃったの…」
「…え…?」
想像も出来ない程の…あまりの衝撃の内容に。
雅耶は、一瞬頭が真っ白になった。
「それって…連れ去られたって…こと…?」
雅耶の頭の中に『誘拐』の二文字が浮かび上がる。
(ありえないっ。何で冬樹がそんな目にっ?!)
信じられないと思いながらも、とにかく他に情報がない今、彼女の話を詳しく聞く必要があると雅耶は考えた。
「どんな車だったっ?唯花ちゃんっ。そいつはどんなヤツだったんだっ?」
そんなに力を込めている訳ではないが、問い詰めるように唯花の両肩を掴んで言った。
「う…ん…。確か黒の、ワゴン車…だったと思う…。でもどんな人だったかは…遠かったし分からないわ。でも、少なくとも野崎くんを乗せた人以外に運転手もいたハズよ…」
そう言って、俯きながら目を反らすと「後は知らない…」と唯花は首を振った。
(黒のワゴン車…。それだけじゃ、手掛かりが無さすぎる…)
雅耶は途方に暮れた。
「何で…?何でそんな大事なこと…今まで黙っていたんだ…」
掴んでいた唯花の肩からスッ…と手を引くと、雅耶は少し距離を取り、俯いている彼女を見下ろした。
唯花が視線を上げると、責めている風ではないが困惑気味の雅耶の視線と目が合った。
唯花はカッ…となると、声を上げた。
「何でって…。こうなるって分かってたからに決まってるじゃないっ!」
突然、強い視線で声を荒げる唯花に、雅耶は目を見張った。
「そうやって野崎くんの方を優先しちゃうって分かってたからっ!だから言えなかったっ。言いたくなんか…なかったのよっ…」
唯花の瞳からは、涙が零れ落ちる。
一緒に帰っていても、久賀くんが前を歩く野崎くんの動向ばかりを目で追っていること位…気付いていた。
野崎くんがいる時は、私の方を見てくれないことも。
普段は話をしていても相槌ばかりの久賀くんが、野崎くんの話しになると生き生きとして、自分から色々なことを教えてくれて…。
彼のことをどれだけ大切に想っているか…。それを見せ付けられたような気がして、辛かった。
幼馴染みでも、兄弟でも、どんな繋がりでも関係ない。
結局二人の間には、私が入り込む隙間なんかないって…。
私じゃ敵わないんだって分かってしまったから。
「…唯花ちゃん…」
「ぜんぶ…っ…。全部久賀くんが悪いのよっ!!」
そう吐き捨てるように言うと。
唯花は顔を両手で覆い、声を上げて泣き出した。
「それって…。どういう…こと…?車…?」
唯花の言っている意味が解らない。
「唯花ちゃんっ、お願いだっ。知ってる事を教えてくれっ」
真剣に話しの続きを促してくる雅耶に、唯花はぽつりぽつりと語りだした。
「私、野崎くんも今日参加するのかなって思ってたの。でも、野崎くん…一本先の道を入って行っちゃって…。だから『お店はこっちだよ』って教えてあげようと思って後を追い掛けたの…」
「…うん…」
「でも…。そしたら、私がその道に出た時には、野崎くんが…男の人に抱えられてて…。そのまま車に乗せられて、何処かへ連れて行かれちゃったの…」
「…え…?」
想像も出来ない程の…あまりの衝撃の内容に。
雅耶は、一瞬頭が真っ白になった。
「それって…連れ去られたって…こと…?」
雅耶の頭の中に『誘拐』の二文字が浮かび上がる。
(ありえないっ。何で冬樹がそんな目にっ?!)
信じられないと思いながらも、とにかく他に情報がない今、彼女の話を詳しく聞く必要があると雅耶は考えた。
「どんな車だったっ?唯花ちゃんっ。そいつはどんなヤツだったんだっ?」
そんなに力を込めている訳ではないが、問い詰めるように唯花の両肩を掴んで言った。
「う…ん…。確か黒の、ワゴン車…だったと思う…。でもどんな人だったかは…遠かったし分からないわ。でも、少なくとも野崎くんを乗せた人以外に運転手もいたハズよ…」
そう言って、俯きながら目を反らすと「後は知らない…」と唯花は首を振った。
(黒のワゴン車…。それだけじゃ、手掛かりが無さすぎる…)
雅耶は途方に暮れた。
「何で…?何でそんな大事なこと…今まで黙っていたんだ…」
掴んでいた唯花の肩からスッ…と手を引くと、雅耶は少し距離を取り、俯いている彼女を見下ろした。
唯花が視線を上げると、責めている風ではないが困惑気味の雅耶の視線と目が合った。
唯花はカッ…となると、声を上げた。
「何でって…。こうなるって分かってたからに決まってるじゃないっ!」
突然、強い視線で声を荒げる唯花に、雅耶は目を見張った。
「そうやって野崎くんの方を優先しちゃうって分かってたからっ!だから言えなかったっ。言いたくなんか…なかったのよっ…」
唯花の瞳からは、涙が零れ落ちる。
一緒に帰っていても、久賀くんが前を歩く野崎くんの動向ばかりを目で追っていること位…気付いていた。
野崎くんがいる時は、私の方を見てくれないことも。
普段は話をしていても相槌ばかりの久賀くんが、野崎くんの話しになると生き生きとして、自分から色々なことを教えてくれて…。
彼のことをどれだけ大切に想っているか…。それを見せ付けられたような気がして、辛かった。
幼馴染みでも、兄弟でも、どんな繋がりでも関係ない。
結局二人の間には、私が入り込む隙間なんかないって…。
私じゃ敵わないんだって分かってしまったから。
「…唯花ちゃん…」
「ぜんぶ…っ…。全部久賀くんが悪いのよっ!!」
そう吐き捨てるように言うと。
唯花は顔を両手で覆い、声を上げて泣き出した。