ツインクロス
(倉庫の外に出るんだな…。見られちゃまずいものでもあるんだろうか…?)

だが逆に、他の者が周囲にいるような環境なら、こんなに目立つ集団はないだろう…とも思う。ガラの悪い男二人に、スーツ姿の真面目そうな男。(顔は見えなかったけど。)そして、目隠しされて後ろ手に拘束されてる高校生…。

(怪しい事、この上ないだろ…)

そう考えると、他に通行人などはやっぱりいない場所なのかも知れない。
頭の端でそんなことを考えながらも、冬樹は今後の展開に不安を覚えた。
何かの鍵を開ける…その為に、多分これから自分は何処かへ連れて行かれる。
だが、それを開くことなど自分には出来ない事を知っている。
結果、ただ『出来なかった』と、諦めてくれるならまだいい。
でも…果たして、それだけで済むだろうか?

(オレはこいつらの顔を見てる。きっと、タダじゃ済まない…だろうな…)

そう考えている間にも、ゆっくりと何処かへ向かって歩き続けていた。
一度だけ金属質の重そうなドアの開く音がして、建物内に入ったようだった。そこは空調が行き届いていて、涼しかった。そして、自分と男達の歩く靴音の響き具合や、革靴で歩いていても分かる床の感触から、会社や何かの施設なのかもと推測する。
そうすると、入って来たドアは、音のイメージから建物の正面口ではなく、裏口や非常口のような所だったのでは…と、冬樹は考えていた。

(お父さんは、確か製薬会社で働いていたハズだ。こいつらの言う『データ』が仕事関係の物のことを言っているのなら、会社や研究施設か何かの建物なのかも知れない…)

後々、逃げる時に困らないように、歩いて来た方角をある程度覚えておこうと冬樹は精神を集中させる。
『冬樹』の静脈認証…。それを試すつもりで、此処に連れて来たのなら、この後ろ手に縛られた縄をその時には外す筈だ。

(その瞬間が、チャンス…)

不意に皆が足を止めると「ピ…ピ…ピ…」という電子音が聞こえ、何かを操作する音が聞こえた。すると、そのうち「ガ―ッ」…と、自動ドアの開くような音が聞こえ、再び歩くように即される。

(セキュリティか何かを解除したのか…?)

だとすれば、それは…この中の一人がこの施設に関係ある人物であることを示すのだ。

(このメンツだったら、明らかにあのスーツの男が関係者…だよな…)

そんなことを考えていた時。
皆がふと、再び足を止めた。

(…着いたのか?)

そう思って僅かに冬樹が構えた瞬間、少し離れた後方から声が掛かった。
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