ツインクロス
「…皆さん、いったいどちらへ?その少年はいったい…?」
男達がぎょっ…として振り返ると、警備員の男が一人そこには立っていた。
「…おいっ。人払いしてたんじゃなかったのかよっ?」
あの『声の男』が少し慌てたような、苛立ちのような声を出す。
途端にスーツの男が前に出た。
「キミ!先程の臨時ミーティングでの説明を聞いていなかったのかねっ?このB棟は現在警備の者であろうとも立ち入り禁止区域になっている筈だっ」
若干の焦りと苛立ちを隠さずに言った。だが、その警備員は深く被った帽子の奥から目を光らせると、ニヤリと口元に笑みを浮かべた。
「…成る程ね。そうやって会社もお前達が思い通りに操作してるって訳か。まぁ、そうでもしなきゃこんな怪しい集団…ホントなら目立って仕方ねぇもんな?」
その警備員らしからぬ物言いに、男達は構えた。
「テメェ…何者だ?ただの警備員じゃねェな?」
例の『声の男』とチンピラ男が前に出る。
その凄味を目前にしても、警備員の男は笑って言った。
「アンタ網代組の大倉サン…だろ?アンタにはそろそろお迎えが来る頃なんじゃないかな?」
「…迎え…だと?」
「勿論、ケ・イ・サ・ツ・だよ。何しろ、いたいけな少年を誘拐して来ちゃったんだし…?」
その言葉に『声の男』大倉は、一気に青ざめた。
だが、もっと動揺していたのはスーツの男の方だった。
「警察が…動いて…?…貴方のせいだ…。勝手にこんな派手な動きを見せたりするから…。…計画性も何も…まるで無い…。だから嫌だったんだ…。もう、おしまいだ…」
その場に膝を付いて頭を抱えると、そのまま項垂れてしまう。そんな中、チンピラ男だけが警備員の男に飛び掛かって行った。
二人が格闘する中、大倉は端でその出来事についていけずに立ち尽くしている冬樹の腕を掴むと、駆け出した。
「おめェには悪ィが、もう少し付き合って貰うぜっ」
目隠しも縛られた腕もそのままに。
詳しい状況も分からぬ中、ただ引き摺られるままに冬樹は足を前へと運ぶしかなかった。
何度もよろめきながら、強引に引かれるままに歩き続けて、再び重そうな鉄扉を開く音がした。途端に蒸し暑い空気に包まれ、外に出たのが分かる。
それでも、大倉は足を止めずに何処かへ向かっているようだった。歩きながらチャリ…という音がして、何かの鍵を手にしたのが分かった。
(もしかして、車で逃げる気か…?)
このままでは、人質としてまた連れ回される…そう思った冬樹は、わざとつまづいてコンクリートの地に膝を付いた。
「チッ!立てっ」
冬樹を無理やり起き上がらせようとする。
だが、その時。
「…っ!誰だっ?テメェはっ」
大倉が警戒をしながら、前方にいるらしい誰かに向かって声を上げた。
「その子を離して貰おう」
聞こえてきた声は、先程の警備員よりも随分と若い男の声だった。
男達がぎょっ…として振り返ると、警備員の男が一人そこには立っていた。
「…おいっ。人払いしてたんじゃなかったのかよっ?」
あの『声の男』が少し慌てたような、苛立ちのような声を出す。
途端にスーツの男が前に出た。
「キミ!先程の臨時ミーティングでの説明を聞いていなかったのかねっ?このB棟は現在警備の者であろうとも立ち入り禁止区域になっている筈だっ」
若干の焦りと苛立ちを隠さずに言った。だが、その警備員は深く被った帽子の奥から目を光らせると、ニヤリと口元に笑みを浮かべた。
「…成る程ね。そうやって会社もお前達が思い通りに操作してるって訳か。まぁ、そうでもしなきゃこんな怪しい集団…ホントなら目立って仕方ねぇもんな?」
その警備員らしからぬ物言いに、男達は構えた。
「テメェ…何者だ?ただの警備員じゃねェな?」
例の『声の男』とチンピラ男が前に出る。
その凄味を目前にしても、警備員の男は笑って言った。
「アンタ網代組の大倉サン…だろ?アンタにはそろそろお迎えが来る頃なんじゃないかな?」
「…迎え…だと?」
「勿論、ケ・イ・サ・ツ・だよ。何しろ、いたいけな少年を誘拐して来ちゃったんだし…?」
その言葉に『声の男』大倉は、一気に青ざめた。
だが、もっと動揺していたのはスーツの男の方だった。
「警察が…動いて…?…貴方のせいだ…。勝手にこんな派手な動きを見せたりするから…。…計画性も何も…まるで無い…。だから嫌だったんだ…。もう、おしまいだ…」
その場に膝を付いて頭を抱えると、そのまま項垂れてしまう。そんな中、チンピラ男だけが警備員の男に飛び掛かって行った。
二人が格闘する中、大倉は端でその出来事についていけずに立ち尽くしている冬樹の腕を掴むと、駆け出した。
「おめェには悪ィが、もう少し付き合って貰うぜっ」
目隠しも縛られた腕もそのままに。
詳しい状況も分からぬ中、ただ引き摺られるままに冬樹は足を前へと運ぶしかなかった。
何度もよろめきながら、強引に引かれるままに歩き続けて、再び重そうな鉄扉を開く音がした。途端に蒸し暑い空気に包まれ、外に出たのが分かる。
それでも、大倉は足を止めずに何処かへ向かっているようだった。歩きながらチャリ…という音がして、何かの鍵を手にしたのが分かった。
(もしかして、車で逃げる気か…?)
このままでは、人質としてまた連れ回される…そう思った冬樹は、わざとつまづいてコンクリートの地に膝を付いた。
「チッ!立てっ」
冬樹を無理やり起き上がらせようとする。
だが、その時。
「…っ!誰だっ?テメェはっ」
大倉が警戒をしながら、前方にいるらしい誰かに向かって声を上げた。
「その子を離して貰おう」
聞こえてきた声は、先程の警備員よりも随分と若い男の声だった。