ツインクロス
「あ…雅耶…」
「…オッス」
野崎の家のドアを軽くノックするだけで、冬樹がすぐに出迎えてくれた。
こちらへ向かっている途中で、事前に「今そっちに向かってる」…と、電話を入れたから待っていてくれたのかも知れない。
「ごめんな。連絡入れるの遅れて…。店に顔出しちゃったか?」
申し訳なさそうに笑顔を見せる冬樹は、割と普段と変わらない様子だった。
でも、心なしか顔色が悪いか。
「ああ。先生に聞いたよ。熱あるんだって?寝てなくて大丈夫なのか?」
慣れたように普通に二人で家に上がって行く。
「平気だよ。宿題やる分には全然問題ない」
そう答えると「ちょっと待ってて」と言って、冬樹はリビングへと入って行った。
だが、今日は雨戸を開けていないので中は薄暗いままだった。
「いや…無理して今日じゃなくても良かったんだぞ?それに、お前ならあの程度の宿題あっという間に終わるんだろうし…」
(実際…俺はただ、冬樹と共有できる時間が欲しかっただけで『宿題』そのものは口実にすぎなかったんだし…)
そんな事を考えながらリビングを覗くと、テーブルの上に置いてあった手提げを持って冬樹が戻って来た。
「いや…そうでもないよ」
「今日は窓開け放ってないんだな?」
雅耶はリビングを見渡しながら言った。
「ん?ああ。今日は上にいたんだ…。上の方が明るいし、風も通るよ」
そう言うと、冬樹は二階へ向かう階段を上り始めた。
雅耶もその後をついて行く。
この家の二階へ上がるのは、本当に久し振りだった。
冬樹は子ども部屋だった部屋の前に立つと、ドアを開けて俺に先に入るように手振りで促した。
「……っ…」
一瞬、目の前に過去の情景が浮かんで消えた。
いつも俺がこの部屋に遊びに来ると、冬樹と夏樹が笑顔で迎え入れてくれた。…そんな小さな二人の姿が一瞬見えたような気がした。
それ位、あの頃と何も変わっていない。
目の前のベランダに面した大きな窓は開け放たれ、明るい光が差し込んでいて、レースのカーテンが僅かな風に揺れていた。
棒立ちでいる俺に、冬樹は。
「変わってないだろ?…あの頃と…」
寂しげな微笑みを浮かべながら、瞳を伏せめがちに言った。
だが、気持ちを切り替えるように視線を上げると、部屋の真ん中に置いてある折り畳み式テーブルを指差して言った。
「良かったらそこ座って?一応部屋は掃除してあるからさ…」
「…オッス」
野崎の家のドアを軽くノックするだけで、冬樹がすぐに出迎えてくれた。
こちらへ向かっている途中で、事前に「今そっちに向かってる」…と、電話を入れたから待っていてくれたのかも知れない。
「ごめんな。連絡入れるの遅れて…。店に顔出しちゃったか?」
申し訳なさそうに笑顔を見せる冬樹は、割と普段と変わらない様子だった。
でも、心なしか顔色が悪いか。
「ああ。先生に聞いたよ。熱あるんだって?寝てなくて大丈夫なのか?」
慣れたように普通に二人で家に上がって行く。
「平気だよ。宿題やる分には全然問題ない」
そう答えると「ちょっと待ってて」と言って、冬樹はリビングへと入って行った。
だが、今日は雨戸を開けていないので中は薄暗いままだった。
「いや…無理して今日じゃなくても良かったんだぞ?それに、お前ならあの程度の宿題あっという間に終わるんだろうし…」
(実際…俺はただ、冬樹と共有できる時間が欲しかっただけで『宿題』そのものは口実にすぎなかったんだし…)
そんな事を考えながらリビングを覗くと、テーブルの上に置いてあった手提げを持って冬樹が戻って来た。
「いや…そうでもないよ」
「今日は窓開け放ってないんだな?」
雅耶はリビングを見渡しながら言った。
「ん?ああ。今日は上にいたんだ…。上の方が明るいし、風も通るよ」
そう言うと、冬樹は二階へ向かう階段を上り始めた。
雅耶もその後をついて行く。
この家の二階へ上がるのは、本当に久し振りだった。
冬樹は子ども部屋だった部屋の前に立つと、ドアを開けて俺に先に入るように手振りで促した。
「……っ…」
一瞬、目の前に過去の情景が浮かんで消えた。
いつも俺がこの部屋に遊びに来ると、冬樹と夏樹が笑顔で迎え入れてくれた。…そんな小さな二人の姿が一瞬見えたような気がした。
それ位、あの頃と何も変わっていない。
目の前のベランダに面した大きな窓は開け放たれ、明るい光が差し込んでいて、レースのカーテンが僅かな風に揺れていた。
棒立ちでいる俺に、冬樹は。
「変わってないだろ?…あの頃と…」
寂しげな微笑みを浮かべながら、瞳を伏せめがちに言った。
だが、気持ちを切り替えるように視線を上げると、部屋の真ん中に置いてある折り畳み式テーブルを指差して言った。
「良かったらそこ座って?一応部屋は掃除してあるからさ…」