ツインクロス
「ここが…」
初めて訪れるその場所に。
冬樹は、ガードレールを何気なく跨いで超えると、花が手向けられている場所まで歩いて行った。
「おい、冬樹。あんまりそっち行くなよ。危ないぞっ」
若干慌てながら、心配げに後ろから声を掛けて来る雅耶に。
「大丈夫。飛び降りたりしないから」
振り返って真面目に答えると「当たり前だ!!」というツッコミが返ってきた。
ガードレールを超えると、崖の縁までは数メートル…と言ったところだった。その周辺には草が生い茂っていて一見平らに見えたものの、岩がゴツゴツ剥き出しになっている所もあり、あまり先へ行くとうっかりつまづいて崖下に落ちかねない感じだ。
冬樹は、崖の縁よりはだいぶ手前に置いてある花束の側まで行くと屈んでそれを調べてみる。
それはまだ新しく瑞々しい花束だった。
(誰かが、今日持ってきたんだろうか…)
それが父達の事故に関係あるものなのか、あるいは別の事故の犠牲者に手向けた物であるのかは判別しようもなかったが。
冬樹は、自分が持ってきた花束をその横に添えると、そっと祈るように目を瞑った。
「…すごい高さだな…」
気が付くと、いつの間にかすぐ横に雅耶が来ていて、緊張気味に周囲を見渡していた。
冬樹も立ち上がり、頷くと崖下の海を眺めた。
「この高さから車が落ちたら、ひとたまりもないよな…」
ポツリ…と呟く。
「…冬樹…」
『死んだなんてうそだ。きっと帰ってくる』
ただただ、その事実を認めたくなくて。
八年もの間、一度もこの地に足を運ぶこともせず、現実から目を逸らし自分に言い聞かせていた言葉。
(でも、これじゃ流石に希望も何もない…)
こんな所から車で落ちて、助かる訳ない。
そう、思ってしまった。
ある意味、素直に諦めがついてしまった感じだった。
(…今更…なんだけどな。もっと早い段階でこの地を訪れていれば、気持ちを切り替えられて良かったんだろうか…?そうしたら、少しは何かが変わっていたのか?)
それこそ、今更悔やんでも後の祭りなのだが。
そのまま暫く二人海風に吹かれながら、無言でそこからの景色を眺めていた。
崖下から、岸壁に強く打ち付ける波の音が低く轟いていた。
そんな中。
滅多に車通りのない中、一台の車がカーブから直線に出た辺りで停車した。
初めて訪れるその場所に。
冬樹は、ガードレールを何気なく跨いで超えると、花が手向けられている場所まで歩いて行った。
「おい、冬樹。あんまりそっち行くなよ。危ないぞっ」
若干慌てながら、心配げに後ろから声を掛けて来る雅耶に。
「大丈夫。飛び降りたりしないから」
振り返って真面目に答えると「当たり前だ!!」というツッコミが返ってきた。
ガードレールを超えると、崖の縁までは数メートル…と言ったところだった。その周辺には草が生い茂っていて一見平らに見えたものの、岩がゴツゴツ剥き出しになっている所もあり、あまり先へ行くとうっかりつまづいて崖下に落ちかねない感じだ。
冬樹は、崖の縁よりはだいぶ手前に置いてある花束の側まで行くと屈んでそれを調べてみる。
それはまだ新しく瑞々しい花束だった。
(誰かが、今日持ってきたんだろうか…)
それが父達の事故に関係あるものなのか、あるいは別の事故の犠牲者に手向けた物であるのかは判別しようもなかったが。
冬樹は、自分が持ってきた花束をその横に添えると、そっと祈るように目を瞑った。
「…すごい高さだな…」
気が付くと、いつの間にかすぐ横に雅耶が来ていて、緊張気味に周囲を見渡していた。
冬樹も立ち上がり、頷くと崖下の海を眺めた。
「この高さから車が落ちたら、ひとたまりもないよな…」
ポツリ…と呟く。
「…冬樹…」
『死んだなんてうそだ。きっと帰ってくる』
ただただ、その事実を認めたくなくて。
八年もの間、一度もこの地に足を運ぶこともせず、現実から目を逸らし自分に言い聞かせていた言葉。
(でも、これじゃ流石に希望も何もない…)
こんな所から車で落ちて、助かる訳ない。
そう、思ってしまった。
ある意味、素直に諦めがついてしまった感じだった。
(…今更…なんだけどな。もっと早い段階でこの地を訪れていれば、気持ちを切り替えられて良かったんだろうか…?そうしたら、少しは何かが変わっていたのか?)
それこそ、今更悔やんでも後の祭りなのだが。
そのまま暫く二人海風に吹かれながら、無言でそこからの景色を眺めていた。
崖下から、岸壁に強く打ち付ける波の音が低く轟いていた。
そんな中。
滅多に車通りのない中、一台の車がカーブから直線に出た辺りで停車した。