ツインクロス
「悪いけど、オレ達そろそろ行くから。じゃあな」
一応、声だけ掛けて冬樹はさっさとその場を離れようとするが、力がそれに食い付いて来た。
「何だよー、久し振りにあったってのに冷てぇなァ。もしかして、山を下りるのか?何なら駅まで送ってやるぞ?乗ってけよ」
車を親指で指すと、自慢げに言った。
「…別に…」
そんな気遣いなどいらん世話だと冬樹は思っていたが、力が続ける。
「この時間だと、麓から出てるバスは多分一時間に一本さえ無いぜ?この暑い中、駅まで歩いたら軽く二時間は掛かるぞ」
「う…」
確かにバスの本数は、昼間の時間は殆ど無かったのを思い出す。
(あんまり乗りたくないけど…でも、こんなトコまで付き合わせてるのはオレなんだし…。オレのワガママで雅耶に何時間も歩かせて苦痛を強いるのも悪いよな…)
妥協して乗せて貰おうか冬樹が迷っていると、隣で聞いていた雅耶が口を開いた。
「別に、二時間位平気だよなっ?特別急ぐ旅でもないし。ゆっくり歩いて帰るので大丈夫です。…なっ?冬樹?」
そう言って、笑顔で同意を求めて来た。
「あ…ああ。…そうだな…」
(雅耶…。オレが力のこと苦手だって言ったから…?)
多分、気を使ってくれたのだろう。
「ふーん…」
力は不満そうに冬樹達のことを眺めていたが、気持ちを切り替えるように言った。
「まァいいや。じゃあ、またなっ。冬樹…」
そう言って、車の方へと足を向ける。
だが、ふと何かに気付いたように歩みを止めると、再びこちらを振り返った。
「そう言えば…お前に会ったら、伝えておきたいと思ってたことがあったんだ」
「………?」
思いのほか真面目な表情で見つめてくる力に、何を言い出すのか冬樹が警戒していると。
「あの事故の真相…」
と、力が呟いた。
「……えっ?」
「ここで起きた、野崎のおじさんの転落事故。…あれは、ただの事故なんかじゃない」
「えっ……」
突然の、思わぬその言葉に。
冬樹は驚きを隠せず、大きく瞳を見開いたまま固まっていた。
力は、そんなこちらの反応も予測していたのか、そのまま淡々と言葉を続ける。
「あれは仕組まれたものだ…。多分だけど、な…」
それだけ言うと、すぐに身を翻して車へ向かった。
「ちょっ…ちょっと待てっ!それってっ…」
我に返り、引き留めようと動き出すも、力はすぐに乗車し、あっという間に車は走り出して行ってしまった。
一応、声だけ掛けて冬樹はさっさとその場を離れようとするが、力がそれに食い付いて来た。
「何だよー、久し振りにあったってのに冷てぇなァ。もしかして、山を下りるのか?何なら駅まで送ってやるぞ?乗ってけよ」
車を親指で指すと、自慢げに言った。
「…別に…」
そんな気遣いなどいらん世話だと冬樹は思っていたが、力が続ける。
「この時間だと、麓から出てるバスは多分一時間に一本さえ無いぜ?この暑い中、駅まで歩いたら軽く二時間は掛かるぞ」
「う…」
確かにバスの本数は、昼間の時間は殆ど無かったのを思い出す。
(あんまり乗りたくないけど…でも、こんなトコまで付き合わせてるのはオレなんだし…。オレのワガママで雅耶に何時間も歩かせて苦痛を強いるのも悪いよな…)
妥協して乗せて貰おうか冬樹が迷っていると、隣で聞いていた雅耶が口を開いた。
「別に、二時間位平気だよなっ?特別急ぐ旅でもないし。ゆっくり歩いて帰るので大丈夫です。…なっ?冬樹?」
そう言って、笑顔で同意を求めて来た。
「あ…ああ。…そうだな…」
(雅耶…。オレが力のこと苦手だって言ったから…?)
多分、気を使ってくれたのだろう。
「ふーん…」
力は不満そうに冬樹達のことを眺めていたが、気持ちを切り替えるように言った。
「まァいいや。じゃあ、またなっ。冬樹…」
そう言って、車の方へと足を向ける。
だが、ふと何かに気付いたように歩みを止めると、再びこちらを振り返った。
「そう言えば…お前に会ったら、伝えておきたいと思ってたことがあったんだ」
「………?」
思いのほか真面目な表情で見つめてくる力に、何を言い出すのか冬樹が警戒していると。
「あの事故の真相…」
と、力が呟いた。
「……えっ?」
「ここで起きた、野崎のおじさんの転落事故。…あれは、ただの事故なんかじゃない」
「えっ……」
突然の、思わぬその言葉に。
冬樹は驚きを隠せず、大きく瞳を見開いたまま固まっていた。
力は、そんなこちらの反応も予測していたのか、そのまま淡々と言葉を続ける。
「あれは仕組まれたものだ…。多分だけど、な…」
それだけ言うと、すぐに身を翻して車へ向かった。
「ちょっ…ちょっと待てっ!それってっ…」
我に返り、引き留めようと動き出すも、力はすぐに乗車し、あっという間に車は走り出して行ってしまった。