ツインクロス
冬樹は、結局流れで学校までの道のりをずっと力と二人で歩くことになってしまった。

(何でコイツ、急に電車通学なんて始めたんだ?まさか、これから毎日この時間だと会うことになるのか?)

思わず、不安を感じずにはいられない。
最近では、力に対しての苦手意識も少しづつ薄れていっている気はするのだが、それでもやっぱり何か裏があるような気がして、警戒を解けずにいた。それをある程度表に出しているのに、力には伝わらないようで、いつも…いや、以前よりももっと傍に居ることが多くなっているような気がする。

(…これで、帰りも一緒なんて言ったらどうしよう…)

考えただけで疲れが出そうだった。
そんなことを考えている時、今まで静かだった力が口を開いた。
「なぁ冬樹、唐突だけどさ。お前、おじさん達の命日にあの崖に来てたろ?今迄も何度か来てたのか?」
「…えっ?」
思わぬ質問が来て冬樹は戸惑った。
「いや、オレは…。あそこへは…初めて行ったんだ」
僅かに動揺を見せながらも答えるが、力は特に気にする様子もなく「ふーん」と頷いた。
「何だ、そうだったのか。俺は夏休みは別荘にいることも多かったし、近くだからで毎年欠かさず行ってたんだが。いつも早い時間に必ず花束が手向けられていたから、この間みたいにお前が来ていたのかと思っていたんだ。そうか…じゃあ、前に見掛けたのは別の誰かだったんだな…」
「…えっ?見掛けたのか?」
「ああ。何年か前の話だが、車で通り際…後ろ姿だけだけどな。俺と同じ位の子どもだったからお前だと思ってたんだが」

冬樹は思わぬ話に、ふと足を止めた。
確かに自分達が行った時も、既に花束が一つ手向けられていた。

「あの時も花束は一つあったけど…。それって父の事故に関係するものなのか?もしかしたら、他の事故の犠牲者に向けられた物とかかも知れないだろ?」
立ち止まってこちらを振り返って待っている力に気付き、再び冬樹は歩き出しながら言った。
「いや、必ず決まって『あの日』の朝なんだぞ。それ以外の季節に花があることもあるけど、少なからずあの花は、おじさん達に手向けられた物だと思うぜ?」
「そう…」

(あんな場所まで、わざわざ命日に毎年花を手向ける子ども…なんて…)

身内に自分達兄妹と近い年齢の者などいない。

もしも、考えられるとしたら…?

その人物のことが気になりながらも。
気付けば既に学校の敷地内へと入っていて、周囲にクラスメイト達が増え始め、その話はそこで終わってしまった。


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