ツインクロス
食堂に着くと、いつものように各自料理を取り、それぞれ空いている席へと散って行く。
雅耶は長瀬と話しながら、冬樹が後から来ても良いように比較的空いてるテーブルへと移動した。その向かい側にさり気なく回った力が、雅耶に話し掛けて来た。

「なあ、雅耶。お前にずっと聞きたかったことがあるんだが…」
「…ん?」
「お前、冬樹と夏樹と幼馴染みで兄弟のように育ったんだろう?夏樹のことはどう思っていたんだ?」
その唐突な質問に。
雅耶と長瀬は、思わず顔を見合わせた。
「…どう、…というと?」
「前にも言ったが、俺は夏樹を嫁に貰う気でいた」
そこまで聞いて、長瀬が飛び上がった。

「ええーーーーっ!?よめーっ!?ココに来て雅耶の最大のライバル出現かーーっ!?」

その大きな声に、周囲の視線がそのテーブルに集中する。
「お前、声大きいっ!」
雅耶は、何故だか嬉しそうに立ち上がっている長瀬を押さえこむと、大きく溜息を吐いた。
「まったく、そんなの聞いてどうするんだ」
「どうするも何も、聞いてみたかっただけだ。素直に答えろよ」
微妙な雰囲気の中。

「…お前ら、何騒いでるんだ?注目されてるぞ?」

そこに、トレーを持った冬樹がやって来た。
「…っ!?冬樹?」
「あわわっ!冬樹チャン…」
冬樹は、雅耶と長瀬の驚きように首を傾げるも、空いている二人の向かい側、力の隣の席へと座った。

「ちょっとちょっと…マズイんじゃないの?この話題わ!冬樹チャン、またブルーになっちゃうんじゃ…」
長瀬が横から肘で小突いて来る。
(…そういえば、前にそんなことあったな…)
雅耶は苦笑しながらも「大丈夫だよ…」と小さく小突き返しながら答える。
(あれは、ある意味ブルーになったんじゃなくて、きっと単に驚いただけなんだろうな…。何たって、本人の前で告白しちゃったようなモノだし…)
雅耶は、冬樹を眺めながら思った。
「………?」
冬樹は、見つめてくる雅耶の視線に不思議そうな顔をしながらも、お茶に手を伸ばしている。

そこで、再び力が口を開いた。
「なぁ、どうなんだよ?お前も夏樹のこと愛してたのかっ?」
その言葉に。

ぶはっ!!

冬樹が思い切りお茶を吹きそうになった。
辛うじて、前にいる長瀬の方へ吹かずに済んだものの、げほげほと(むせ)ている。
「だ…大丈夫?冬樹チャン…」
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