ツインクロス
冬樹のアパートへと向かって二人、ゆっくり歩いて行く。
駅前から離れ、静かな住宅街へと入ると、ひらけた夜空には満月に近い大きな月が現れた。
(…そう言えば、もうすぐ中秋の名月だって新聞に出てたな…。まだまだ暑いけど、もう秋なんだな…)
月を見上げながら雅耶がふと…そんなことを考えていると、暫く無言で何かを考えている風だった冬樹が静かに口を開いた。
「今日の帰り…さ、力が…突然変なことを言い出したんだ…」
考えながら話すようにぽつりぽつり…と言葉を続ける冬樹に、雅耶は視線を空から冬樹へと移した。
「…変なこと?」
「ああ…」
冬樹は、帰りの電車内での力の話を雅耶に説明した。
「…新薬…か」
「うん…。突然、そんなことを言い出すなんておかしいだろ?新薬の開発のことを知ってるのは分かる。でも、何でそれが狙われてることまで、あいつが知ってるんだ?…って…」
(――確かにそうだ…)
雅耶は疑問に思ったことを、冬樹に尋ねた。
「大倉達にお前が狙われたことまで、あいつは知っていたのか?」
「いや…言い回しは『オレを狙ってる奴等が探していたのは…』みたいな感じで、大倉の名前とかは…。でも、オレがデータを理由に狙われていることは知ってるみたいだった」
冬樹は記憶を手繰るように口元に手を添えて、下を向いた。
「それ以外には、何か言ってたか?」
「それが…。その後すぐ駅に着いてしまって聞けなかったんだ…」
「何で、そんな話になったんだ?」
「…分からない。急に…あいつが話を振って来て…」
「……そうか…」
思わず、知らず知らずの内に足を止めていた二人は、お互い少しの間を置いて顔を見合わせると、どちらからともなく再びゆっくりと歩き出した。
「ずっと考えていたんだ。その話が本当なら…そんな薬のデータを何故、暴力団関係者なんかが欲しがるのか。わざわざ誘拐を企てまで手に入れようとするって、余程の物でないと有り得ないと思うんだ。それだけの何か秘密があるのか…。その理由が何なのかなって…」
「…そうだな…。例えば、すごく画期的な薬で儲かるから…という金目的か。あるいは…」
雅耶の言わんとしていることを理解して、冬樹は頷いた。
「…何か、危険なもの…とかでなければ良いんだけど…」
(もしかして、それがお父さんの『罪』…なのか?)
駅前から離れ、静かな住宅街へと入ると、ひらけた夜空には満月に近い大きな月が現れた。
(…そう言えば、もうすぐ中秋の名月だって新聞に出てたな…。まだまだ暑いけど、もう秋なんだな…)
月を見上げながら雅耶がふと…そんなことを考えていると、暫く無言で何かを考えている風だった冬樹が静かに口を開いた。
「今日の帰り…さ、力が…突然変なことを言い出したんだ…」
考えながら話すようにぽつりぽつり…と言葉を続ける冬樹に、雅耶は視線を空から冬樹へと移した。
「…変なこと?」
「ああ…」
冬樹は、帰りの電車内での力の話を雅耶に説明した。
「…新薬…か」
「うん…。突然、そんなことを言い出すなんておかしいだろ?新薬の開発のことを知ってるのは分かる。でも、何でそれが狙われてることまで、あいつが知ってるんだ?…って…」
(――確かにそうだ…)
雅耶は疑問に思ったことを、冬樹に尋ねた。
「大倉達にお前が狙われたことまで、あいつは知っていたのか?」
「いや…言い回しは『オレを狙ってる奴等が探していたのは…』みたいな感じで、大倉の名前とかは…。でも、オレがデータを理由に狙われていることは知ってるみたいだった」
冬樹は記憶を手繰るように口元に手を添えて、下を向いた。
「それ以外には、何か言ってたか?」
「それが…。その後すぐ駅に着いてしまって聞けなかったんだ…」
「何で、そんな話になったんだ?」
「…分からない。急に…あいつが話を振って来て…」
「……そうか…」
思わず、知らず知らずの内に足を止めていた二人は、お互い少しの間を置いて顔を見合わせると、どちらからともなく再びゆっくりと歩き出した。
「ずっと考えていたんだ。その話が本当なら…そんな薬のデータを何故、暴力団関係者なんかが欲しがるのか。わざわざ誘拐を企てまで手に入れようとするって、余程の物でないと有り得ないと思うんだ。それだけの何か秘密があるのか…。その理由が何なのかなって…」
「…そうだな…。例えば、すごく画期的な薬で儲かるから…という金目的か。あるいは…」
雅耶の言わんとしていることを理解して、冬樹は頷いた。
「…何か、危険なもの…とかでなければ良いんだけど…」
(もしかして、それがお父さんの『罪』…なのか?)