ツインクロス
「力…それ…。誰の静脈認証をするつもり…なんだ…?それに、そのデータって…」
冬樹は、まさかと思いながらも恐る恐る聞いてみる。
すると、全てのケーブルを繋いで設置をし終えた力が、ゆっくりとこちらを振り返った。
「…この状況で誰のも何もないだろ?俺の手で解除出来るものなら、とっくにもっと簡単な…こんな大掛かりな装置なんかいらないパスワードとかに変更してるさ」
「…力…。お前…」
冬樹は僅かに後ずさる。
「野崎のおじさんのファイルには、厳重なロックが施されていてどうやっても開けないんだ。調べてみた所、お前の掌の静脈認証で開くらしいじゃないか。…これ、解除してみてくれないか?」
僅かににじり寄って来る力に、冬樹は睨みつけて低い声を出した。
「お…まえっ、やっぱりそれが目的だったんだな」
強い視線で牽制するも、力には効いていないようだった。
平然と、無表情を張り付けたまま言葉を続ける。
「人聞きの悪い言い方をするなよ。お前だって、おじさんのことを知りたいんだろう?だから此処へ来たんだろう?このデータにそれが全て隠されているんだ。お前の知りたいこともこの中にあるんだよ」
その言葉に、冬樹の瞳が僅かに揺らいだ。
「…知りたいんだろう?おじさんが何を作ったのか」
「……っ…」
冬樹は力から視線を逸らすと、俯いた。
何かを考え迷っているようにも見える。
そんな冬樹を前に、力は僅かに眉を下げると続けた。
「俺も…知りたいんだ。そのデータが何なのか…」
その言葉に冬樹がピクリ…と動く。
「俺は、親父が欲しがってるそのデータを誰よりも先に手に入れて、親父を思い知らせてやりたいんだ」
「………」
「親父は変わった…。昔は優しかったけどある時を境に、仕事一筋になって…。儲ける為には手段を選ばない…そんな最低な奴に成り下がっていったんだ。母さんの病状が悪化した時も、ろくに見舞いにも来ないで、結局最後も看取ることが出来なかった。俺は、そんな親父を許さない。あいつを…見返してやりたいんだっ」
今まで静かに独り言のように語っていた力が、語尾を強くした。
その声に、冬樹は僅かに顔を上げる。
「だから頼むっ。冬樹っ!データのセキュリティを解除してくれっ。お前だけが頼りなんだっ」
力はそう言うと、戸惑っている冬樹に深々と頭を下げた。
冬樹は、まさかと思いながらも恐る恐る聞いてみる。
すると、全てのケーブルを繋いで設置をし終えた力が、ゆっくりとこちらを振り返った。
「…この状況で誰のも何もないだろ?俺の手で解除出来るものなら、とっくにもっと簡単な…こんな大掛かりな装置なんかいらないパスワードとかに変更してるさ」
「…力…。お前…」
冬樹は僅かに後ずさる。
「野崎のおじさんのファイルには、厳重なロックが施されていてどうやっても開けないんだ。調べてみた所、お前の掌の静脈認証で開くらしいじゃないか。…これ、解除してみてくれないか?」
僅かににじり寄って来る力に、冬樹は睨みつけて低い声を出した。
「お…まえっ、やっぱりそれが目的だったんだな」
強い視線で牽制するも、力には効いていないようだった。
平然と、無表情を張り付けたまま言葉を続ける。
「人聞きの悪い言い方をするなよ。お前だって、おじさんのことを知りたいんだろう?だから此処へ来たんだろう?このデータにそれが全て隠されているんだ。お前の知りたいこともこの中にあるんだよ」
その言葉に、冬樹の瞳が僅かに揺らいだ。
「…知りたいんだろう?おじさんが何を作ったのか」
「……っ…」
冬樹は力から視線を逸らすと、俯いた。
何かを考え迷っているようにも見える。
そんな冬樹を前に、力は僅かに眉を下げると続けた。
「俺も…知りたいんだ。そのデータが何なのか…」
その言葉に冬樹がピクリ…と動く。
「俺は、親父が欲しがってるそのデータを誰よりも先に手に入れて、親父を思い知らせてやりたいんだ」
「………」
「親父は変わった…。昔は優しかったけどある時を境に、仕事一筋になって…。儲ける為には手段を選ばない…そんな最低な奴に成り下がっていったんだ。母さんの病状が悪化した時も、ろくに見舞いにも来ないで、結局最後も看取ることが出来なかった。俺は、そんな親父を許さない。あいつを…見返してやりたいんだっ」
今まで静かに独り言のように語っていた力が、語尾を強くした。
その声に、冬樹は僅かに顔を上げる。
「だから頼むっ。冬樹っ!データのセキュリティを解除してくれっ。お前だけが頼りなんだっ」
力はそう言うと、戸惑っている冬樹に深々と頭を下げた。