ツインクロス
「チッ、こうなったら…」
どういじってみても出続けるエラーに萩原は舌打ちをすると、パソコンはそのままに立ち上がり、今度は冬樹を無理やり立ち上がらせようと、再び腕を掴み上げた。
「…いた…っ…」
「ほらっ立つんだっ!」
薬のせいで身体が痺れて立ち上がる力がないというのに、勝手なものだ。
それでも、無理矢理冬樹の腕を肩に掛け、引き摺りながら連れ出そうとする萩原に。
「…くそっ!離せっ!…触るなっ…」
(身体さえ自由に動けばこんな奴、速攻のしてやるのに…)
冬樹は歯痒い思いを抱いていた。
その時、床に転がったまま今まで放置されていた力が萩原に向かって怒鳴った。
「お前っ…何処へ行くつもりだッ?」
だが、萩原はチラリと力を見やると言った。
「この子を本社まで連れて行かなくてはいけないので、力様…申し訳ありませんが少々お待ちいただけますか?」
その冷たい言葉に、力は目を剥いた。
萩原の言う『本社』は、この別荘から優に片道一時間は掛かる所にある。単純に計算しても、再び戻って来るまでには二時間は掛かるということになる。
(それだけの時間、俺を此処に放置する気なのか…?)
それに、冬樹を本社へ連れて行く…ということは…。
「お前っ、結局は親父の駒だったのかっ?」
(…ずっと、お前だけは俺の味方だと思っていたのに…)
信じていた男に裏切られ、力は悔しげに奥歯を噛んだ。
「申し訳ありません、力様。基本的に私の雇い主は、あなたのお父様ですから。主人の命令は絶対なのですよ」
「…親父、の…?」
「ええ。今迄は貴方のご希望を第一に優先して行動し、お守りするようにとの命を受けておりました。ですが、先日少々変更がありまして…。貴方を利用してでも、この少年の確保を優先するようにと仰せつかったものですから」
そう、何でもないことのように話す萩原に、力はそれ以上何も言えず視線を逸らすしかなかった。
そうして床に蹲ったまま、力の入らない拳を悔しげに握りしめた。
萩原は、脱力している冬樹をやっとのことで引き摺ってドアの前まで来ると。
「チッ、薬を使ったのが逆に仇となったかっ…」
イラつきながら、片手で勢いよくその扉を開けた。
だが、次の瞬間。
「…うっ!」
ドア横に潜んでいた人物の手刀が素早く萩原の首後ろに決まって、萩原はあっけなくその場に崩れ落ちてしまった。
「あっ…」
冬樹が、萩原に抱えられたまま共に地に倒れ込むのを覚悟した瞬間…。
横から伸びて来た人物の腕の中へと引き込まれると、優しく抱き留められた。
どういじってみても出続けるエラーに萩原は舌打ちをすると、パソコンはそのままに立ち上がり、今度は冬樹を無理やり立ち上がらせようと、再び腕を掴み上げた。
「…いた…っ…」
「ほらっ立つんだっ!」
薬のせいで身体が痺れて立ち上がる力がないというのに、勝手なものだ。
それでも、無理矢理冬樹の腕を肩に掛け、引き摺りながら連れ出そうとする萩原に。
「…くそっ!離せっ!…触るなっ…」
(身体さえ自由に動けばこんな奴、速攻のしてやるのに…)
冬樹は歯痒い思いを抱いていた。
その時、床に転がったまま今まで放置されていた力が萩原に向かって怒鳴った。
「お前っ…何処へ行くつもりだッ?」
だが、萩原はチラリと力を見やると言った。
「この子を本社まで連れて行かなくてはいけないので、力様…申し訳ありませんが少々お待ちいただけますか?」
その冷たい言葉に、力は目を剥いた。
萩原の言う『本社』は、この別荘から優に片道一時間は掛かる所にある。単純に計算しても、再び戻って来るまでには二時間は掛かるということになる。
(それだけの時間、俺を此処に放置する気なのか…?)
それに、冬樹を本社へ連れて行く…ということは…。
「お前っ、結局は親父の駒だったのかっ?」
(…ずっと、お前だけは俺の味方だと思っていたのに…)
信じていた男に裏切られ、力は悔しげに奥歯を噛んだ。
「申し訳ありません、力様。基本的に私の雇い主は、あなたのお父様ですから。主人の命令は絶対なのですよ」
「…親父、の…?」
「ええ。今迄は貴方のご希望を第一に優先して行動し、お守りするようにとの命を受けておりました。ですが、先日少々変更がありまして…。貴方を利用してでも、この少年の確保を優先するようにと仰せつかったものですから」
そう、何でもないことのように話す萩原に、力はそれ以上何も言えず視線を逸らすしかなかった。
そうして床に蹲ったまま、力の入らない拳を悔しげに握りしめた。
萩原は、脱力している冬樹をやっとのことで引き摺ってドアの前まで来ると。
「チッ、薬を使ったのが逆に仇となったかっ…」
イラつきながら、片手で勢いよくその扉を開けた。
だが、次の瞬間。
「…うっ!」
ドア横に潜んでいた人物の手刀が素早く萩原の首後ろに決まって、萩原はあっけなくその場に崩れ落ちてしまった。
「あっ…」
冬樹が、萩原に抱えられたまま共に地に倒れ込むのを覚悟した瞬間…。
横から伸びて来た人物の腕の中へと引き込まれると、優しく抱き留められた。