ツインクロス
「少しは俺の気持ちも考えて欲しいよな…」
「…えっ…?」
独り言のような雅耶の呟きが聞こえて、冬樹は俯いていた顔を咄嗟に上げた。
すると…思いのほか、真剣な雅耶の顔がそこにはあった。
そのまま、抱かれたままの状態で真っ直ぐに瞳を射られてしまい、冬樹は硬直する。
(まさ、や…?)
「無茶ばっかりして…。今日だってどれだけ俺が心配してたか、分かってるか?」
「………」
少し怒っているような顔。
「俺、力には気を付けろって言ったよな?直接、力が何か企んでた訳ではなかったみたいだけど。こんな自由が利かなくなるような怪しい薬なんか飲まされて…。あの人が助けてくれなかったら、もっと酷い目に遭っていたかも知れないんだぞ?分かってるのか?」
それに関しては、自分でも警戒してた分耳が痛かった。
気を付けていながらも、まんまと罠にはまってしまったのは、完全に自分の甘さが招いたことだ。
その結果、こうして雅耶にまで迷惑を掛けてしまっている自分は、やっぱり駄目駄目だと思った。
「…ご、めん…」
(何だか、オレ…。さっきから謝ってばかりだ…)
自分でそれに気付きながらも、結局は他の言葉が出て来なかった。
雅耶は、まだ何か物言いたげに、じっとこちらを見詰めてくる。
あまりに間近にある雅耶の瞳に、冬樹は耐えきれずに視線を彷徨わせると、俯いた。
雅耶は迷っていた。
遠回しに何を言っても、もう意味がないような気がしていた。
夏樹が装っている『冬樹』に対して言うのでは、もう言葉が心にまで届かない気がするのだ。
自分の中の夏樹への想い。
本当の想いを…。本当の言葉を…。
その本音を伝えたくて堪らない。
よろめいた夏樹を咄嗟に受け止めただけとはいえ、一度腕の中に抱きしめてしまったら、もう手離すことは困難で。
その、愛しくてたまらない存在を、ずっと己の内に留めておきたいと思う。
目の前で迷うように、不安げに瞳を揺らすお前を。
「もう、限界…かな…」
溜息混じりに聞こえてきた雅耶の思わぬ呟きに、冬樹は目を見張った。
その、思ってもみなかった言葉に、冬樹はビクリ…と身体を硬くする。
(どういう…意味…?もしかして、オレ…。雅耶に嫌われた…?愛想が尽きた…って…。そういう、意味…?)
絶望的な気持ちで、冬樹は恐る恐る視線を上げた。
自分でも知らぬ内に、身体がカタカタと小刻みに震えだす。
雅耶の顔を見るのが、こんなに怖い…なんて。
「…えっ…?」
独り言のような雅耶の呟きが聞こえて、冬樹は俯いていた顔を咄嗟に上げた。
すると…思いのほか、真剣な雅耶の顔がそこにはあった。
そのまま、抱かれたままの状態で真っ直ぐに瞳を射られてしまい、冬樹は硬直する。
(まさ、や…?)
「無茶ばっかりして…。今日だってどれだけ俺が心配してたか、分かってるか?」
「………」
少し怒っているような顔。
「俺、力には気を付けろって言ったよな?直接、力が何か企んでた訳ではなかったみたいだけど。こんな自由が利かなくなるような怪しい薬なんか飲まされて…。あの人が助けてくれなかったら、もっと酷い目に遭っていたかも知れないんだぞ?分かってるのか?」
それに関しては、自分でも警戒してた分耳が痛かった。
気を付けていながらも、まんまと罠にはまってしまったのは、完全に自分の甘さが招いたことだ。
その結果、こうして雅耶にまで迷惑を掛けてしまっている自分は、やっぱり駄目駄目だと思った。
「…ご、めん…」
(何だか、オレ…。さっきから謝ってばかりだ…)
自分でそれに気付きながらも、結局は他の言葉が出て来なかった。
雅耶は、まだ何か物言いたげに、じっとこちらを見詰めてくる。
あまりに間近にある雅耶の瞳に、冬樹は耐えきれずに視線を彷徨わせると、俯いた。
雅耶は迷っていた。
遠回しに何を言っても、もう意味がないような気がしていた。
夏樹が装っている『冬樹』に対して言うのでは、もう言葉が心にまで届かない気がするのだ。
自分の中の夏樹への想い。
本当の想いを…。本当の言葉を…。
その本音を伝えたくて堪らない。
よろめいた夏樹を咄嗟に受け止めただけとはいえ、一度腕の中に抱きしめてしまったら、もう手離すことは困難で。
その、愛しくてたまらない存在を、ずっと己の内に留めておきたいと思う。
目の前で迷うように、不安げに瞳を揺らすお前を。
「もう、限界…かな…」
溜息混じりに聞こえてきた雅耶の思わぬ呟きに、冬樹は目を見張った。
その、思ってもみなかった言葉に、冬樹はビクリ…と身体を硬くする。
(どういう…意味…?もしかして、オレ…。雅耶に嫌われた…?愛想が尽きた…って…。そういう、意味…?)
絶望的な気持ちで、冬樹は恐る恐る視線を上げた。
自分でも知らぬ内に、身体がカタカタと小刻みに震えだす。
雅耶の顔を見るのが、こんなに怖い…なんて。