ツインクロス
「本社ってことは、社長である力の親父さんの所へ連れて行こうとしてたってことか。でも、何か…急ぐ理由でもあるのかな。何だか焦っているような感じがしないか?手段を選んでいられなくなって強行手段に出た…みたいな…」
「うん。そうかも知れない。あいつらは、どうしても父さんのそのデータを開きたくて躍起になってるのかも。今日、オレが薬で動けないでいる間にも、嬉々として萩原がオレの手を認証に掛けてたよ」
「それって、前に言ってた静脈認証ってやつだろう?でもさ、それって…もしかして、お前じゃ…」
以前聞いた時は、夏樹が冬樹に成りすましているなどとは思いもよらなかった。だが、事実を知った今なら、その解除は容易ではないことが分かる。
「うん…。本当は、ふゆちゃんの手じゃないと開けないんだ」
夏樹は少し困ったような笑顔を見せた。
「でも、向こうはそれを知らないから。今日、無理やり解除させようとオレの手で試していたけど…。開かなくても他にも何か秘密があるとしか思ってないみたいだった」
その右手を握りしめる。
「どんなにオレを狙って試したって、父さんのデータはあいつらの手に渡ることはないけど…。こっちも手に入れられないのは同じだからな…」
途方に暮れたように夏樹は天井を見上げると、小さく溜息を吐いた。
その言葉に、雅耶は大きく反応した。
「馬鹿!同じじゃないだろっ。データを取られることはなくても、お前はそれだけ危険な目に遭うんじゃないかっ。そこんとこ間違えるなよっ」
「…雅耶…?」
急に真剣な顔で怒り出した雅耶に、夏樹は困惑した様子を見せている。
「俺が言いたいこと、ちゃんと分かってるかっ?…確かに、今日みたいなことがあっても、そのおじさんの大事なデータはあいつらの手に渡ることはない。でも、実際お前があいつらの元に連れて行かれてたら、もっと危険な目に遭っていたかも知れないんだぞ」
「…うん…」
頷きながらも、未だ困惑気味な夏樹に。
(やっぱり、お前は解ってないよ…)
雅耶は立ち上がると、気持ちを落ち着けるように窓際へ足を運ぶと、カーテンを開けた。
外はすっかり日が暮れて、夜の闇が広がっている。
(…雅耶…?)
「もしも、今日みたいに身体の利かないままに何処かへ連れ去られたとして、お前が冬樹ではなく夏樹だと気付かれたらどうなると思う?相手は逆上して何をするか分からない…。それに…」
「…それに…?」
こちらに背を向けたまま、言いよどんでいる雅耶に。
夏樹は、ただ不安な気持ちを募らせていた。
「うん。そうかも知れない。あいつらは、どうしても父さんのそのデータを開きたくて躍起になってるのかも。今日、オレが薬で動けないでいる間にも、嬉々として萩原がオレの手を認証に掛けてたよ」
「それって、前に言ってた静脈認証ってやつだろう?でもさ、それって…もしかして、お前じゃ…」
以前聞いた時は、夏樹が冬樹に成りすましているなどとは思いもよらなかった。だが、事実を知った今なら、その解除は容易ではないことが分かる。
「うん…。本当は、ふゆちゃんの手じゃないと開けないんだ」
夏樹は少し困ったような笑顔を見せた。
「でも、向こうはそれを知らないから。今日、無理やり解除させようとオレの手で試していたけど…。開かなくても他にも何か秘密があるとしか思ってないみたいだった」
その右手を握りしめる。
「どんなにオレを狙って試したって、父さんのデータはあいつらの手に渡ることはないけど…。こっちも手に入れられないのは同じだからな…」
途方に暮れたように夏樹は天井を見上げると、小さく溜息を吐いた。
その言葉に、雅耶は大きく反応した。
「馬鹿!同じじゃないだろっ。データを取られることはなくても、お前はそれだけ危険な目に遭うんじゃないかっ。そこんとこ間違えるなよっ」
「…雅耶…?」
急に真剣な顔で怒り出した雅耶に、夏樹は困惑した様子を見せている。
「俺が言いたいこと、ちゃんと分かってるかっ?…確かに、今日みたいなことがあっても、そのおじさんの大事なデータはあいつらの手に渡ることはない。でも、実際お前があいつらの元に連れて行かれてたら、もっと危険な目に遭っていたかも知れないんだぞ」
「…うん…」
頷きながらも、未だ困惑気味な夏樹に。
(やっぱり、お前は解ってないよ…)
雅耶は立ち上がると、気持ちを落ち着けるように窓際へ足を運ぶと、カーテンを開けた。
外はすっかり日が暮れて、夜の闇が広がっている。
(…雅耶…?)
「もしも、今日みたいに身体の利かないままに何処かへ連れ去られたとして、お前が冬樹ではなく夏樹だと気付かれたらどうなると思う?相手は逆上して何をするか分からない…。それに…」
「…それに…?」
こちらに背を向けたまま、言いよどんでいる雅耶に。
夏樹は、ただ不安な気持ちを募らせていた。