ツインクロス
「…まさや…?」
傍へとゆっくり近付いて来る雅耶を、夏樹はただ呆然と見上げていた。
急にどうしたというのだろう。
自分は何か、雅耶の気分を損ねるようなことを言ってしまったのだろうか。
何故だか雅耶の顔が怖い…気がする。
夏樹が戸惑ってる間に雅耶は目の前まで来ると、夏樹の手の中にあるペットボトルをそっと取り上げ、それを机の上に置いた。そうして、夏樹のその細い手首を掴むと引っ張り上げて椅子から立たせようとする。
それは決して強引な動作ではなく、あくまでも誘導するようなものだった。
だが、無言で見下ろして来る雅耶の、その行動の意図が解らず、夏樹は手を引かれるままに立ち上がりながらも不安げな瞳を雅耶に向けた。
雅耶は夏樹の手を掴んだまま、僅かに表情を和らげると口を開いた。
「今日、お前は力の誘いに乗ってあの別荘へ行ったけど…。それが、どんなに危険なことか判ってるか?もしも力が黒幕の指示で動いている駒だったとして、沢山の人間が向こうでお前を待ち受けていたとしたらどうなったと思う?流石に大勢の大人相手に一人で戦える訳ないだろう?」
「…それは…」
確かにそうだと思う。
そこまで考えていなかった自分は、やっぱり甘かったのかも知れない。
実際、萩原一人を相手にして薬を盛られて何も出来なかった自分は、何を言われても反省と後悔しかない。
だが、そう言っている間も雅耶はずっと自分の手を掴んだままで…。
こんな状況になってる意味が分からなくて、正直困惑していた。
「それに…。力にお前の正体がばれてしまったとしたら…。もう『騙し討ち』だけでは済まないことになるかも知れないよ」
「…え…?ちから…?『騙し討ち』…って…?」
何のことを言っているのか分からず『?』を飛ばしている夏樹を前に、雅耶は一瞬ハッとした表情を見せると。
「いや…ここで力のことを持ち出すのは狡いよな…」
そう、自嘲気味に呟いた。
「雅耶…?」
思わず、不安になって名前を呼んだその時だった。
掴まれた腕を、不意にぐいっ…と引かれる。
(えっ…?)
気が付けば、その身体は雅耶と入れ替わるように反転させられ、部屋の壁際を背に立たされていて。
空いていたもう片方の手も取られると、両手を壁に縫い付けられた状態で雅耶が覆いかぶさって来た。
「まさ…や…?」
傍へとゆっくり近付いて来る雅耶を、夏樹はただ呆然と見上げていた。
急にどうしたというのだろう。
自分は何か、雅耶の気分を損ねるようなことを言ってしまったのだろうか。
何故だか雅耶の顔が怖い…気がする。
夏樹が戸惑ってる間に雅耶は目の前まで来ると、夏樹の手の中にあるペットボトルをそっと取り上げ、それを机の上に置いた。そうして、夏樹のその細い手首を掴むと引っ張り上げて椅子から立たせようとする。
それは決して強引な動作ではなく、あくまでも誘導するようなものだった。
だが、無言で見下ろして来る雅耶の、その行動の意図が解らず、夏樹は手を引かれるままに立ち上がりながらも不安げな瞳を雅耶に向けた。
雅耶は夏樹の手を掴んだまま、僅かに表情を和らげると口を開いた。
「今日、お前は力の誘いに乗ってあの別荘へ行ったけど…。それが、どんなに危険なことか判ってるか?もしも力が黒幕の指示で動いている駒だったとして、沢山の人間が向こうでお前を待ち受けていたとしたらどうなったと思う?流石に大勢の大人相手に一人で戦える訳ないだろう?」
「…それは…」
確かにそうだと思う。
そこまで考えていなかった自分は、やっぱり甘かったのかも知れない。
実際、萩原一人を相手にして薬を盛られて何も出来なかった自分は、何を言われても反省と後悔しかない。
だが、そう言っている間も雅耶はずっと自分の手を掴んだままで…。
こんな状況になってる意味が分からなくて、正直困惑していた。
「それに…。力にお前の正体がばれてしまったとしたら…。もう『騙し討ち』だけでは済まないことになるかも知れないよ」
「…え…?ちから…?『騙し討ち』…って…?」
何のことを言っているのか分からず『?』を飛ばしている夏樹を前に、雅耶は一瞬ハッとした表情を見せると。
「いや…ここで力のことを持ち出すのは狡いよな…」
そう、自嘲気味に呟いた。
「雅耶…?」
思わず、不安になって名前を呼んだその時だった。
掴まれた腕を、不意にぐいっ…と引かれる。
(えっ…?)
気が付けば、その身体は雅耶と入れ替わるように反転させられ、部屋の壁際を背に立たされていて。
空いていたもう片方の手も取られると、両手を壁に縫い付けられた状態で雅耶が覆いかぶさって来た。
「まさ…や…?」