ツインクロス
突然のこんな状況に、夏樹は大きく瞳を見開いた。
頭の中は、既にパニック状態だった。
(…どうして、こんな状況になってるんだっ…?)
咄嗟に振り払おうとした腕は、思いのほか強い力で押さえつけられていて、びくともしない。
掴まれた両腕が、妙に熱かった。
それに、何よりも真剣な雅耶の顔が近すぎて…。
「隙だらけだよ、夏樹…。そういう所が無防備だって言うんだ」
間近で見詰められ、言葉が出て来ない。
自分の心音がどんどん大きく、早くなっていくのが分かる。
雅耶は真剣な瞳のまま、口元だけ僅かに笑みを浮かべると言った。
「お前は知るべきだよ。男を甘く見てるとどうなるか…。それに、自分がどんな目で見られているかを、ね。さっきまで…お前が眠っている間、俺がどんな気持ちで傍に居たか、お前に分かるか?」
(雅耶が、どんな気持ちでいたか…?…どんな…?)
そんなこと、分からない。
それさえも見透かすように、雅耶はじっ…とこちらを見詰めてくる。
「俺はね、夏樹…。眠っているお前に、キスをしようとしたんだよ」
(…え…?)
そんなことを突然、真顔で言う雅耶に。
夏樹は思わず顔を赤らめながらも、真意を窺う様な瞳を雅耶に向けた。
「…残念ながら、それは未遂…だったんだけどね」
雅耶は苦笑を浮かべてそう言うと、今度は耳元に顔を寄せてきた。
「でも、今度は本当に奪うかも知れないよ」
「……っ!」
「こんな状況じゃ得意の背負い投げは無理だろう?力比べでは、流石に男の俺相手に女のお前では勝ち目ないよな?…それとも、この手を振りほどけるか?殴ってでも退けてみろよ」
「…雅耶…」
確かに、こんな状況では自分は何も出来ない。…無力だ。
雅耶は普通の男よりも、もしかしたら腕力はあるし、どんなに暴れても上手くかわせてしまうのだろう。
(でも、そういうことじゃない…)
こういう状況になった今なら解る。
どんなに自分が女であるのか、分かってしまった。
(だって、こんなにも…)
『怖い』と思う自分がいる。
こうして、覆いかぶさるように迫られていると、その体格の差を思い知らされて。
壁に縫い付けるように腕を押さえている、その手の大きさと力強さに、自分との違いを感じて…。
いつもの優しい、人懐っこい笑顔の雅耶とは違う、大人びた表情。
それは、自分とは違う…『男』の顔。
頭の中は、既にパニック状態だった。
(…どうして、こんな状況になってるんだっ…?)
咄嗟に振り払おうとした腕は、思いのほか強い力で押さえつけられていて、びくともしない。
掴まれた両腕が、妙に熱かった。
それに、何よりも真剣な雅耶の顔が近すぎて…。
「隙だらけだよ、夏樹…。そういう所が無防備だって言うんだ」
間近で見詰められ、言葉が出て来ない。
自分の心音がどんどん大きく、早くなっていくのが分かる。
雅耶は真剣な瞳のまま、口元だけ僅かに笑みを浮かべると言った。
「お前は知るべきだよ。男を甘く見てるとどうなるか…。それに、自分がどんな目で見られているかを、ね。さっきまで…お前が眠っている間、俺がどんな気持ちで傍に居たか、お前に分かるか?」
(雅耶が、どんな気持ちでいたか…?…どんな…?)
そんなこと、分からない。
それさえも見透かすように、雅耶はじっ…とこちらを見詰めてくる。
「俺はね、夏樹…。眠っているお前に、キスをしようとしたんだよ」
(…え…?)
そんなことを突然、真顔で言う雅耶に。
夏樹は思わず顔を赤らめながらも、真意を窺う様な瞳を雅耶に向けた。
「…残念ながら、それは未遂…だったんだけどね」
雅耶は苦笑を浮かべてそう言うと、今度は耳元に顔を寄せてきた。
「でも、今度は本当に奪うかも知れないよ」
「……っ!」
「こんな状況じゃ得意の背負い投げは無理だろう?力比べでは、流石に男の俺相手に女のお前では勝ち目ないよな?…それとも、この手を振りほどけるか?殴ってでも退けてみろよ」
「…雅耶…」
確かに、こんな状況では自分は何も出来ない。…無力だ。
雅耶は普通の男よりも、もしかしたら腕力はあるし、どんなに暴れても上手くかわせてしまうのだろう。
(でも、そういうことじゃない…)
こういう状況になった今なら解る。
どんなに自分が女であるのか、分かってしまった。
(だって、こんなにも…)
『怖い』と思う自分がいる。
こうして、覆いかぶさるように迫られていると、その体格の差を思い知らされて。
壁に縫い付けるように腕を押さえている、その手の大きさと力強さに、自分との違いを感じて…。
いつもの優しい、人懐っこい笑顔の雅耶とは違う、大人びた表情。
それは、自分とは違う…『男』の顔。