ツインクロス
トラブルメイカー?
昼時の春の柔らかい日差しに包まれて、冬樹はうっすらと目を細めた。
そよそよとゆるやかな風が髪を撫でてゆく。
(いい天気だな…。お腹も一杯だし、こんな暖かいと授業サボって昼寝でもしたくなるな…)
思わず出そうになる欠伸をかみ殺して、冬樹はそんなことを考えていた。でも実際は、そんな呑気なことを思ってる場合ではないのだけれど…。
左右からガッチリと両腕を掴まれて連れてこられたのは、ある意味定番…と言ってもいい人気の少ない体育館裏だった。体育館への渡り廊下から少し外れて、コンクリート敷きの上を歩いて来たので、皆上履きのままである。
ある程度校舎からの死角に入ると、三人は示し合わせたように足を止めた。
「まさかお前がこの学校の新入生だったとはな。奇遇だなぁオイ」
ゴツイ男が嬉しそうに、いやらしい笑顔を向けて覗き込んでくる。
「………」
両脇を固めていた男二人は、やっと冬樹の腕から手を離すと、そのまま逃げられないように冬樹を取り囲み、退路を断った。
「こないだは邪魔が入ったけど、今日は逃げられないぜ?どうするよ?おチビちゃん」
「助けなんか呼んでも来ねェぞ?ここは滅多に人なんか来ねェからな」
「覚悟するんだな」
そう口々に、三人は笑いながら言った。
ニヤニヤと人の顔を覗き込んでくる目の前の男の襟元に付けられている校章の色は、二年生のものだった。
(年上だとは思ってたけど…まさか、この学校の上級生だったなんてね。…でも…何ていうか、ホントに制服似合わないな…)
無表情でそんなことを考えている冬樹だった。だが、無言で大人しくしている冬樹を『ビビッている』と勘違いした男達は、余裕の笑みで言葉を続けた。
「でも、まぁ…泣いて謝るってんなら許してやらないこともないぜ?勿論、条件はあるがな」
そう言って不意に手を伸ばしてきたので、冬樹は反射的に一歩後ろへ下がろうとした。…が、二人の男が後ろに詰めていて下がることは叶わない。
「……っ」
その隙に、ゴツイ男の無骨な手が冬樹の顎を掴んで上向きにさせる。
「俺達に従えよ」
「…せ…」
小さな冬樹の呟きに。
「…あ?」
ゴツイ男が聞き返したその瞬間。
「離せって言ったんだっ!」
そう言って、顎に掛けた男の手を素早く裏拳で払った。
「っ!!」
「っな!!」
「ッ!このガキッ!!」
咄嗟に後ろの二人が掴み掛ってくるのを、瞬時に一人には肘打ちを食らわし、一人には足払いを掛けて回避する。
それはまるで舞うように軽やかで、無駄のない動きだった。
そよそよとゆるやかな風が髪を撫でてゆく。
(いい天気だな…。お腹も一杯だし、こんな暖かいと授業サボって昼寝でもしたくなるな…)
思わず出そうになる欠伸をかみ殺して、冬樹はそんなことを考えていた。でも実際は、そんな呑気なことを思ってる場合ではないのだけれど…。
左右からガッチリと両腕を掴まれて連れてこられたのは、ある意味定番…と言ってもいい人気の少ない体育館裏だった。体育館への渡り廊下から少し外れて、コンクリート敷きの上を歩いて来たので、皆上履きのままである。
ある程度校舎からの死角に入ると、三人は示し合わせたように足を止めた。
「まさかお前がこの学校の新入生だったとはな。奇遇だなぁオイ」
ゴツイ男が嬉しそうに、いやらしい笑顔を向けて覗き込んでくる。
「………」
両脇を固めていた男二人は、やっと冬樹の腕から手を離すと、そのまま逃げられないように冬樹を取り囲み、退路を断った。
「こないだは邪魔が入ったけど、今日は逃げられないぜ?どうするよ?おチビちゃん」
「助けなんか呼んでも来ねェぞ?ここは滅多に人なんか来ねェからな」
「覚悟するんだな」
そう口々に、三人は笑いながら言った。
ニヤニヤと人の顔を覗き込んでくる目の前の男の襟元に付けられている校章の色は、二年生のものだった。
(年上だとは思ってたけど…まさか、この学校の上級生だったなんてね。…でも…何ていうか、ホントに制服似合わないな…)
無表情でそんなことを考えている冬樹だった。だが、無言で大人しくしている冬樹を『ビビッている』と勘違いした男達は、余裕の笑みで言葉を続けた。
「でも、まぁ…泣いて謝るってんなら許してやらないこともないぜ?勿論、条件はあるがな」
そう言って不意に手を伸ばしてきたので、冬樹は反射的に一歩後ろへ下がろうとした。…が、二人の男が後ろに詰めていて下がることは叶わない。
「……っ」
その隙に、ゴツイ男の無骨な手が冬樹の顎を掴んで上向きにさせる。
「俺達に従えよ」
「…せ…」
小さな冬樹の呟きに。
「…あ?」
ゴツイ男が聞き返したその瞬間。
「離せって言ったんだっ!」
そう言って、顎に掛けた男の手を素早く裏拳で払った。
「っ!!」
「っな!!」
「ッ!このガキッ!!」
咄嗟に後ろの二人が掴み掛ってくるのを、瞬時に一人には肘打ちを食らわし、一人には足払いを掛けて回避する。
それはまるで舞うように軽やかで、無駄のない動きだった。