ツインクロス
立ち尽くしている雅耶の後ろで、二人の様子を見ていた長瀬が口を開いた。
「やっぱ、知り合いの上級生がいて話し込んでただけとかじゃないの?」
「そんな雰囲気には見えなかったけど…」
ゆっくりと自分の席に戻りながら雅耶は言った。
「でもさー、特に抵抗してるカンジ無かったじゃん?」
「うーん…」
確かにあの時、冬樹は言われるままに彼らについて行ったように見えたのは確かだ。
席に座り頬杖をついて考え込んでいる雅耶の横で、机に寄り掛かりながら長瀬は思いついたように手を打った。
「それか、あいつらに何か弱みを握られているとかっ」
「脅されてるってことか?」
「うん。それか、逆に―…」
「…逆に?」
「大した相手じゃないと見越してついて行って全員綺麗にのしてきちゃったとかね♪」
何故だか嬉しそうにそんな物騒なことを言う長瀬に、雅耶は溜息を付くと、
「まぁ、ここで色々詮索してても埒があかないよな…」
遠い目をしながら呟いた。
冬樹は、教室から少し離れた廊下の窓から外を眺めていた。
雅耶の追求から逃げるように教室を出て来てしまったけれど、もうすぐ6時限目が始まる。
(戻らないと…な…)
『あいつらと何処に行っていたんだ?あの後、心配になって追いかけたんだけど…』
いい加減、見限って欲しいのに。
お人好しの幼馴染みは、なかなか自分と過去とを切り捨ててはくれない。
(そんな心配いらないよ、雅耶…)
そういう優しさは、昔からの雅耶の良い所だ。
でも…今のオレには、身に余る。
その時、突然強い風が唸りを上げて窓から吹き抜けてゆき、冬樹は咄嗟に目をつぶった。廊下に貼り出されているポスターなどの掲示物が、カサカサと大きく音を立てた。
冬樹はすっかり乱れてしまった髪を整え、ひとつ溜め息をつくと、目の前の窓を閉めて教室へと戻って行った。
放課後になると、途端に一年生棟の周辺は賑やかになった。今日から一年生の部活動への参加が本格的に始まるのだ。
ここ成蘭高校は、運動系、文化系ともに部活動がとても盛んな学校である。自主的に入部する者は勿論だが、部員獲得の為の必死な勧誘も激化するのが、この時期の特徴でもあった。
「やっぱ、知り合いの上級生がいて話し込んでただけとかじゃないの?」
「そんな雰囲気には見えなかったけど…」
ゆっくりと自分の席に戻りながら雅耶は言った。
「でもさー、特に抵抗してるカンジ無かったじゃん?」
「うーん…」
確かにあの時、冬樹は言われるままに彼らについて行ったように見えたのは確かだ。
席に座り頬杖をついて考え込んでいる雅耶の横で、机に寄り掛かりながら長瀬は思いついたように手を打った。
「それか、あいつらに何か弱みを握られているとかっ」
「脅されてるってことか?」
「うん。それか、逆に―…」
「…逆に?」
「大した相手じゃないと見越してついて行って全員綺麗にのしてきちゃったとかね♪」
何故だか嬉しそうにそんな物騒なことを言う長瀬に、雅耶は溜息を付くと、
「まぁ、ここで色々詮索してても埒があかないよな…」
遠い目をしながら呟いた。
冬樹は、教室から少し離れた廊下の窓から外を眺めていた。
雅耶の追求から逃げるように教室を出て来てしまったけれど、もうすぐ6時限目が始まる。
(戻らないと…な…)
『あいつらと何処に行っていたんだ?あの後、心配になって追いかけたんだけど…』
いい加減、見限って欲しいのに。
お人好しの幼馴染みは、なかなか自分と過去とを切り捨ててはくれない。
(そんな心配いらないよ、雅耶…)
そういう優しさは、昔からの雅耶の良い所だ。
でも…今のオレには、身に余る。
その時、突然強い風が唸りを上げて窓から吹き抜けてゆき、冬樹は咄嗟に目をつぶった。廊下に貼り出されているポスターなどの掲示物が、カサカサと大きく音を立てた。
冬樹はすっかり乱れてしまった髪を整え、ひとつ溜め息をつくと、目の前の窓を閉めて教室へと戻って行った。
放課後になると、途端に一年生棟の周辺は賑やかになった。今日から一年生の部活動への参加が本格的に始まるのだ。
ここ成蘭高校は、運動系、文化系ともに部活動がとても盛んな学校である。自主的に入部する者は勿論だが、部員獲得の為の必死な勧誘も激化するのが、この時期の特徴でもあった。