ツインクロス
すると今度は、横を過ぎていくクラスメイト達の話し声が聞こえてきた。
「…これって明日も続くんだろ?」
「うん、今日明日の二日間だけらしいけどね。今日は放課後からだけど、明日は丸一日勧誘期間だから朝から激戦ってカンジ?」
「うわー…俺、決めといて良かったー」
「うん、この二日間で入りたくなかった部活入っちゃったり、トラウマになっちゃう奴がいるとか聞いたぜ?」
そんな物騒なことを話しながら、笑って教室を出て行くクラスメイト達を横目で見送って。
(冗談じゃない!!)
と、冬樹は思った。
つまりこれは、部活の希望を出していない者に入部を促す為の勧誘イベントという訳だ。
冬樹は、部活に入るつもりは更々なかった。どうしたって自分の性質上文化系は論外なのだが、運動部に入れば、もれなく男臭い部室が待っているのだ。
この学校の場合は、私立だけあってとても施設が充実していて、それぞれの部室も広く取られ、一人一人のロッカーは完全完備されている。そして、運動部室が入っている棟には、各部共同の広いシャワー室までが併設されていて、部活男子にとっては至れり尽くせりなのだが。
(そんな危険な場所に、自分から入って行けるかっての…)
それこそシャワーなど論外、着替えの場でさえ出来れば避けたい所なのだから。ある意味閉鎖された空間である部室などには、近寄りたくもない…というのが本音だった。
(なんとか、この連中から抜け出せないかな…?)
未だに自分の周りでヒートアップしている上級生をよそに、冬樹は機会を窺っていた。
すると、一人のクラスメイトがやはりその勧誘に耐えきれず、逃走を図った。
「逃がさんっ!」
「待てーっ!!」
だが、あっという間に上級生が反応して追い掛ける。ガタガタッと机にぶつかりながらも、廊下へと向かうが、教室の出口で待ち構えていた他の上級生に結局捕まってしまった。
(あんな所にも足止めがいたんだ…)
冬樹は、どうしたものか…と考える。
と、その時。
先程の生徒が捕まった出口とは逆の扉近くに、雅耶と長瀬が立っているのが見えた。
(今だ!!)
冬樹はこのチャンスを逃すまいと、取り囲んでいる上級生の隙間をくぐって逃走を図った。
「あっ!!また逃走者だぞっ!!」
「逃がすかっ!!」
「野崎くん!!」
上級生が口々に大声を上げて追い掛けてくる。猛ダッシュで出口へと向かう冬樹に、雅耶も長瀬も驚きの表情でこちらを振り返っていた。
冬樹は、
「悪いっ!!」
手短にそう言って、雅耶の背中に回り込むと今度は雅耶を盾にして廊下へ出た。その際に、長瀬の向きもくるりと変えて、追っ手からの盾にしたのは言うまでもない。
長身の雅耶の陰に隠れて廊下に飛び出した冬樹に、待機していた足止めの上級生が飛び掛かるが、冬樹はそれを馬跳びのように飛び越して、走り去って行った。
「…これって明日も続くんだろ?」
「うん、今日明日の二日間だけらしいけどね。今日は放課後からだけど、明日は丸一日勧誘期間だから朝から激戦ってカンジ?」
「うわー…俺、決めといて良かったー」
「うん、この二日間で入りたくなかった部活入っちゃったり、トラウマになっちゃう奴がいるとか聞いたぜ?」
そんな物騒なことを話しながら、笑って教室を出て行くクラスメイト達を横目で見送って。
(冗談じゃない!!)
と、冬樹は思った。
つまりこれは、部活の希望を出していない者に入部を促す為の勧誘イベントという訳だ。
冬樹は、部活に入るつもりは更々なかった。どうしたって自分の性質上文化系は論外なのだが、運動部に入れば、もれなく男臭い部室が待っているのだ。
この学校の場合は、私立だけあってとても施設が充実していて、それぞれの部室も広く取られ、一人一人のロッカーは完全完備されている。そして、運動部室が入っている棟には、各部共同の広いシャワー室までが併設されていて、部活男子にとっては至れり尽くせりなのだが。
(そんな危険な場所に、自分から入って行けるかっての…)
それこそシャワーなど論外、着替えの場でさえ出来れば避けたい所なのだから。ある意味閉鎖された空間である部室などには、近寄りたくもない…というのが本音だった。
(なんとか、この連中から抜け出せないかな…?)
未だに自分の周りでヒートアップしている上級生をよそに、冬樹は機会を窺っていた。
すると、一人のクラスメイトがやはりその勧誘に耐えきれず、逃走を図った。
「逃がさんっ!」
「待てーっ!!」
だが、あっという間に上級生が反応して追い掛ける。ガタガタッと机にぶつかりながらも、廊下へと向かうが、教室の出口で待ち構えていた他の上級生に結局捕まってしまった。
(あんな所にも足止めがいたんだ…)
冬樹は、どうしたものか…と考える。
と、その時。
先程の生徒が捕まった出口とは逆の扉近くに、雅耶と長瀬が立っているのが見えた。
(今だ!!)
冬樹はこのチャンスを逃すまいと、取り囲んでいる上級生の隙間をくぐって逃走を図った。
「あっ!!また逃走者だぞっ!!」
「逃がすかっ!!」
「野崎くん!!」
上級生が口々に大声を上げて追い掛けてくる。猛ダッシュで出口へと向かう冬樹に、雅耶も長瀬も驚きの表情でこちらを振り返っていた。
冬樹は、
「悪いっ!!」
手短にそう言って、雅耶の背中に回り込むと今度は雅耶を盾にして廊下へ出た。その際に、長瀬の向きもくるりと変えて、追っ手からの盾にしたのは言うまでもない。
長身の雅耶の陰に隠れて廊下に飛び出した冬樹に、待機していた足止めの上級生が飛び掛かるが、冬樹はそれを馬跳びのように飛び越して、走り去って行った。