ツインクロス
「はははははっ。それは大変だったなー」
人の苦労も知らず、思いきり笑い飛ばす溝呂木の斜め後ろを冬樹は不満げに歩いていた。スカウト集団がいることで帰れないと話した冬樹に「この学校には裏門もあるぞ」と教えてくれて、一緒にそこまで案内してくれるというのでお言葉に甘え、現在に至るのである。
「この学校は部活動が盛んだからな。優秀な人材は是非ともその能力を生かして学校の為に貢献してくれってことなんだろうな。それだけモテモテなのは、お前が必要とされてるってことなんだぞー」
(そんなことを言われても、あまり嬉しくない…)
校舎の裏庭を抜けて歩いて行く。裏庭には緑が多く植えられていて、風が吹くと木々が揺れてザアザアと音を立てた。風に煽られて顔にかかる前髪を、鬱陶し気にかき上げたその時、前を歩いていた溝呂木が突如足を止めた。
「………?」
冬樹もつられて足を止める。
すると、溝呂木が前を向いたまま口を開いた。
「昼休みの時も言ったけど、野崎…お前柔道部に入らないか?」
「オレはどこの部にも入らないって、さっきも…」
そう冬樹が言葉にすると同時に、溝呂木はくるりと振り返ると「…じゃあ仕方ないな」と、意味深に笑って言った。そして突然、手をパチンッと大きく打ち鳴らした。
「……えっ?」
何の合図だ?と、いぶかしげに冬樹が思った瞬間、周囲から沢山の上級生達が出てきた。皆が柔道着に身を包んでいる。
(…もしかして、ハメられた!?)
瞬時に警戒を見せる冬樹に、溝呂木は笑みを深くして言った。
「お前みたいな子が柔道部来てくれたら嬉しいんだけどなー。意志が固そうだから強硬手段に出させてもらうよ」
「………っ」
周囲をガッチリと隙間なく囲まれてしまう。
教師までグルだとは流石に思っていなかった冬樹は、不機嫌一杯で溝呂木に向かって言った。
「生徒を騙してまで勧誘だなんて、随分いい性格してますね」
「裏門があるのは本当だよ。この先に行けばすぐ出られる筈だ。でも、その前に寄ってって欲しい所があるんだよね」
そう嬉しそうに笑って、指で示したのはすぐ真横の建物だった。
「まだ校内を把握していないみたいだから教えてあげるけど、ここが道場棟だよ。柔道場をはじめ、剣道場や空手道場なんかもここに入っているんだ」
人の苦労も知らず、思いきり笑い飛ばす溝呂木の斜め後ろを冬樹は不満げに歩いていた。スカウト集団がいることで帰れないと話した冬樹に「この学校には裏門もあるぞ」と教えてくれて、一緒にそこまで案内してくれるというのでお言葉に甘え、現在に至るのである。
「この学校は部活動が盛んだからな。優秀な人材は是非ともその能力を生かして学校の為に貢献してくれってことなんだろうな。それだけモテモテなのは、お前が必要とされてるってことなんだぞー」
(そんなことを言われても、あまり嬉しくない…)
校舎の裏庭を抜けて歩いて行く。裏庭には緑が多く植えられていて、風が吹くと木々が揺れてザアザアと音を立てた。風に煽られて顔にかかる前髪を、鬱陶し気にかき上げたその時、前を歩いていた溝呂木が突如足を止めた。
「………?」
冬樹もつられて足を止める。
すると、溝呂木が前を向いたまま口を開いた。
「昼休みの時も言ったけど、野崎…お前柔道部に入らないか?」
「オレはどこの部にも入らないって、さっきも…」
そう冬樹が言葉にすると同時に、溝呂木はくるりと振り返ると「…じゃあ仕方ないな」と、意味深に笑って言った。そして突然、手をパチンッと大きく打ち鳴らした。
「……えっ?」
何の合図だ?と、いぶかしげに冬樹が思った瞬間、周囲から沢山の上級生達が出てきた。皆が柔道着に身を包んでいる。
(…もしかして、ハメられた!?)
瞬時に警戒を見せる冬樹に、溝呂木は笑みを深くして言った。
「お前みたいな子が柔道部来てくれたら嬉しいんだけどなー。意志が固そうだから強硬手段に出させてもらうよ」
「………っ」
周囲をガッチリと隙間なく囲まれてしまう。
教師までグルだとは流石に思っていなかった冬樹は、不機嫌一杯で溝呂木に向かって言った。
「生徒を騙してまで勧誘だなんて、随分いい性格してますね」
「裏門があるのは本当だよ。この先に行けばすぐ出られる筈だ。でも、その前に寄ってって欲しい所があるんだよね」
そう嬉しそうに笑って、指で示したのはすぐ真横の建物だった。
「まだ校内を把握していないみたいだから教えてあげるけど、ここが道場棟だよ。柔道場をはじめ、剣道場や空手道場なんかもここに入っているんだ」