ツインクロス
「オレはそんな所に用はない」
強気で反発する冬樹を、溝呂木は楽しそうに眺めると、
「でも、こちらは用があるんだな」
そう言って腕を組んだ。そして、どこか考える素振りを見せると、
「うーん…無理やり強引に入部届書かせちゃうのが本当は手っ取り早いんだけど…」
と、物騒なことをぶつぶつ呟いている。

(おいおい。そんなことがまかり通ってるのか…?この学校は…)

まだ始まったばかりだというのに、この学校を選んでしまったことを後悔してしまいそうになる。
「でも野崎の場合、元気が良すぎるみたいだからね。後々騒ぎ起こされても困るし…譲歩してあげようかな」
溝呂木が笑って言った。
「………」

(…見逃してくれるのか?)

確かに、無理やり入部届なんか書かされて入部させられた日には、暴れまくって部を潰してやる位の覚悟はあるが…。
だが、溝呂木は楽しそうに言った。

「この先輩達を相手にして、勝ったら諦めてあげるよ」

不敵な笑みを浮かべながら。




ところ変わって、本格的に部活動が始まり活気づいている空手部道場。
そこに雅耶はいた。

今年、空手部へ入部した新入生は全部で13名。多いか少ないかは微妙な所だが『武道』という特性上、経験者ばかりが集まっていて、即戦力として頼りになりそうだと上級生達は喜んだ。その為、他の部が新入生スカウトに出回っている中、空手部は特に部員収集をする程困ってはおらず、今日から新入生も交えて練習に取り組み始めていた。
自己紹介や説明なども交え、練習を始めて間もない頃、遅れてきた一人の上級生が興奮気味に道場に入って来た。

「おいっ!柔道部が何か面白いことになってるぞっ!!」

そうして上級生達の間で何やら話していたが、今まで練習の指示を出していた部長が、
「ちょっと休憩にしようっ!!休んでても構わないし、少し自由にしてていいよ。何か柔道部が盛り上がってて面白そうだから、一緒に来たい奴は来てもいいぞっ」
そう言って、上級生達は皆出て行ってしまった。
残された雅耶含む一年生は、お互いに顔を見合わせていたが、やはり何事か気になり、先輩達について行ってみることにした。
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