ツインクロス
(この子が、冬樹くん…)
清香は、ベッドに眠っている冬樹をそっと見下ろした。
随分と可愛らしい少年だなと思う。瞳は閉じられているので、ちゃんと顔が分かる訳ではないが肌が白く綺麗で、大人の男性へと成長を見せる『高校生の男子』というよりは、未だ幼さの残る『少年』の可愛らしさだと清香は思った。だが、それこそ記憶にある幼い頃の冬樹のイメージそのままのような気もした。
清香自身、過去直接冬樹に関わったことは無かったのだが、近所に住む雅耶の姉と交流があった為、雅耶とは繋がりがあってよく遊んであげたりしていた。そんな中で、何度か雅耶が仲の良いそっくりな双子の兄妹を連れてきたことがあった。
それが冬樹と夏樹だった。
雅耶に比べると、一回りも二回りも小さな身体をしていたが、元気一杯の素直な子達だったのを覚えている。三人一緒にいるのがとても自然な感じで、道端で遊んでいる姿を見掛けては、とても微笑ましい気持ちになったものだ。
(入学してすぐの頃、雅耶は冬樹くんのことで悩んでたみたいだけど…。でも、一緒にいたってことは仲良くなれたのかしら?)
清香は、しっかり制服を着こんでいる冬樹に気付き、まずは上着を脱がせることにする。制服がシワにもなるし、流石にそのままでは寝苦しいからだ。
上着を脱がせるのにそっと体勢を変えたり身体を起こしても、目覚める様子は無い。
(かなり、熱が高いみたいね…)
ブレザーの下にもニットのベストを着込んでいた冬樹だったが、とりあえずベストは着せておき、きっちりと締められているネクタイを外してYシャツのボタンを幾つか外すことにする。
そっとネクタイをほどいて。
Yシャツのボタンを上から一つ…二つ…。
そして三つまで外し掛けたその時。
「――…?」
胸に巻いている白い布が目に入った。
最初は、怪我をして包帯を巻いているのかと思った清香だったが…。
「どういう…こと…?」
早い呼吸を繰り返し、上下するその冬樹の胸をそっと調べ、清香は愕然とした。
(まさか…女の子?…冬樹くんが??)
その胸を覆っている『さらし』は、女性の胸を隠す為に巻かれたものだ。
清香は咄嗟に口元を押さえると、混乱した頭を整理しようと必死に頭をフル回転させるのだった。
(女の子であることを冬樹くんは隠している…?)
眠っているその顔は、一度女性だと気付いてしまえば、もう少女のそれとしか見えず。最初、冬樹に感じた『幼さ』や『少年としてのアンバランスさ』に、至極納得がいくように思えた。
(でも…いいえ。この子が女の子である以上…『冬樹くん』ではなく『夏樹ちゃん』ってことよね…?)
清香はとりあえず首もとまで毛布を掛け直すと、額や頭部を冷やす為に冷却シートや氷枕などの準備を始める。
てきぱきと処置を施しながらも、清香は必死に頭の中を整理していた。
(でも、昔…あの事故で野崎さん夫婦と夏樹ちゃんは行方不明になったと聞いているし…。夏樹ちゃんが発見されたっていう話は聞かないわ。でも、此処にいるのは…女の子である以上、夏樹ちゃんに間違いない。…と、いうことの意味は?)
一通り、保健医としてやってあげられる処置を全て終えたところで、扉を控えめにノックする音が聞こえてきた。
清香は、ベッドに眠っている冬樹をそっと見下ろした。
随分と可愛らしい少年だなと思う。瞳は閉じられているので、ちゃんと顔が分かる訳ではないが肌が白く綺麗で、大人の男性へと成長を見せる『高校生の男子』というよりは、未だ幼さの残る『少年』の可愛らしさだと清香は思った。だが、それこそ記憶にある幼い頃の冬樹のイメージそのままのような気もした。
清香自身、過去直接冬樹に関わったことは無かったのだが、近所に住む雅耶の姉と交流があった為、雅耶とは繋がりがあってよく遊んであげたりしていた。そんな中で、何度か雅耶が仲の良いそっくりな双子の兄妹を連れてきたことがあった。
それが冬樹と夏樹だった。
雅耶に比べると、一回りも二回りも小さな身体をしていたが、元気一杯の素直な子達だったのを覚えている。三人一緒にいるのがとても自然な感じで、道端で遊んでいる姿を見掛けては、とても微笑ましい気持ちになったものだ。
(入学してすぐの頃、雅耶は冬樹くんのことで悩んでたみたいだけど…。でも、一緒にいたってことは仲良くなれたのかしら?)
清香は、しっかり制服を着こんでいる冬樹に気付き、まずは上着を脱がせることにする。制服がシワにもなるし、流石にそのままでは寝苦しいからだ。
上着を脱がせるのにそっと体勢を変えたり身体を起こしても、目覚める様子は無い。
(かなり、熱が高いみたいね…)
ブレザーの下にもニットのベストを着込んでいた冬樹だったが、とりあえずベストは着せておき、きっちりと締められているネクタイを外してYシャツのボタンを幾つか外すことにする。
そっとネクタイをほどいて。
Yシャツのボタンを上から一つ…二つ…。
そして三つまで外し掛けたその時。
「――…?」
胸に巻いている白い布が目に入った。
最初は、怪我をして包帯を巻いているのかと思った清香だったが…。
「どういう…こと…?」
早い呼吸を繰り返し、上下するその冬樹の胸をそっと調べ、清香は愕然とした。
(まさか…女の子?…冬樹くんが??)
その胸を覆っている『さらし』は、女性の胸を隠す為に巻かれたものだ。
清香は咄嗟に口元を押さえると、混乱した頭を整理しようと必死に頭をフル回転させるのだった。
(女の子であることを冬樹くんは隠している…?)
眠っているその顔は、一度女性だと気付いてしまえば、もう少女のそれとしか見えず。最初、冬樹に感じた『幼さ』や『少年としてのアンバランスさ』に、至極納得がいくように思えた。
(でも…いいえ。この子が女の子である以上…『冬樹くん』ではなく『夏樹ちゃん』ってことよね…?)
清香はとりあえず首もとまで毛布を掛け直すと、額や頭部を冷やす為に冷却シートや氷枕などの準備を始める。
てきぱきと処置を施しながらも、清香は必死に頭の中を整理していた。
(でも、昔…あの事故で野崎さん夫婦と夏樹ちゃんは行方不明になったと聞いているし…。夏樹ちゃんが発見されたっていう話は聞かないわ。でも、此処にいるのは…女の子である以上、夏樹ちゃんに間違いない。…と、いうことの意味は?)
一通り、保健医としてやってあげられる処置を全て終えたところで、扉を控えめにノックする音が聞こえてきた。